要件定義書とは?中身と読み手別の見方、システム要件定義書との関係

要件定義書の中身と読み手ごとの見方を説明する記事のアイキャッチ

当サイトの記事は編集部がIPAなど公的機関の公開資料と読者の声を調べて独自に執筆しています。

「要件定義書をまとめておいて」と頼まれたものの、何をどこまで書く文書なのか、つかみきれていない方も多いはずです。

結論から言うと、要件定義書は「このシステムで何を実現するか」を発注側と開発側で合意して、書き残しておく文書です。

この記事を読むと、要件定義書の中身と、誰がどの章を読むのかが分かり、自分の担当範囲が見えてきます。

目次

要件定義書とは?ひとことで言うと「作るものの合意書」です

先に結論

要件定義書とは、システムで実現することを関係者で合意し、文書にしたものです。
ここに書いたことが、設計・開発・テストのすべての土台になります。

要件定義(RD:Requirements Definition)は、システム開発の最初のほうで「何を作るか」を決める工程です。

その工程の結果をまとめた文書が、要件定義書なんです。

「要求」と「要件」は同じではありません

要件定義書を読むときに、まず押さえておきたいのが「要求」と「要件」の違いです。

要求は、利用者や発注者の「こうしたい」「こうなってほしい」という声のことです。

要件は、その要求のうち、予算・期間・技術を踏まえて「システムで実現する」と合意したものです。

言葉中身例
要求利用者・発注者の「こうしたい」申請をスマホからも出したい
要件実現すると合意したこと申請画面はスマホのブラウザで操作できること
要件定義書合意した要件をまとめた文書機能要件の一覧に申請画面を載せ、承認欄に署名する

『要求を全部書けばいいのでは』と思うかもしれません。

実は、要求をそのまま並べただけの文書は、要件定義書としては足りないんです。

何を実現して、何は今回やらないのか、そこまで決めて初めて合意書として使えます。

なぜわざわざ文書にするの?

口頭で決めたことは、時間がたつと人によって覚え方がずれていきます。

例えばこんな会話、どこかで聞いたことがありませんか。

「月末の締め処理も自動になるって言いましたよね?」
「その話は聞いていますが、今回の範囲に入っていたかは記録がないんです」

こうしたすれ違いを防ぐために、決めたことを文字で残しておくわけです。

システム要件定義書・ソフトウェア要件定義書と、どう違うの?

違いは「誰の目線で書くか」

業務の側から見た要件と、システムやソフトウェアの側から見た要件があります。
会社によって呼び方は揺れますが、書く目線が違うと考えると分かりやすいです。

「要件定義書」「システム要件定義書」「ソフトウェア要件定義書」と、似た名前が並んでいて混乱しますよね。

ここでは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「共通フレーム2013」という考え方を借りて説明します。

共通フレーム2013は、日本で広く使われている、開発の工程と言葉をそろえるための物差しです。

工程の並びで見ると位置がはっきりします

共通フレーム2013では、企画プロセスの次に要件定義プロセスがあり、そのあとにシステム要件定義、ソフトウェア要件定義と続きます。

要件定義プロセスは、利用者側の要件、つまり業務要件を決める工程です。

システム要件定義とソフトウェア要件定義は、それを開発側の技術的な要件に落としていく工程です。

文書の呼び方主な目線書くことの例
要件定義書業務と利用者業務の流れ、対象範囲、必要な機能の大枠
システム要件定義書システム全体機能、性能、他システムとの連携、運用
ソフトウェア要件定義書ソフトウェア単位画面や処理ごとの振る舞い、入力と出力

小さな案件では、これらを一冊にまとめて「要件定義書」と呼ぶことも多いです。

大きなシステム開発の要件定義書では、業務側とシステム側で文書を分けることもあります。

ITの現場での呼び方は会社次第です

IT企業やSIer(システムインテグレーター)によって、同じ文書でも名前が違うことがあります。

『うちの会社の「要件定義資料」と、この記事の要件定義書は同じもの?』と迷ったら、名前より中身で比べてみてください。

業務の流れ、機能、非機能の要件、対象範囲が書いてあれば、役割としてはほぼ同じです。

RFPや要求仕様書とも混ざりやすいです

もう一つ混ざりやすいのが、RFP(提案依頼書)や要求仕様書です。

どれも「発注の前後に出てくる文書」なので、同じものだと思われがちなんです。

文書主に書く人中身
RFP(提案依頼書)発注側ベンダーに提案をお願いするための条件や要望
要求仕様書発注側発注側の要求をまとめたもの
要件定義書発注側と開発側実現すると合意した要件
設計書(仕様書)開発側どう作るか

ざっくり言うと、要求仕様書は「こうしてほしい」、要件定義書は「こうすると決めた」、設計書は「こう作る」という順番です。

呼び方は会社によって揺れるので、社内の文書と照らし合わせるときは中身で確かめておきましょう。

違いを詳しく知りたい方は、要求仕様書と要件定義書の違いで比べています。

工程の違いをもっと詳しく知りたい方は、要件定義とは何かをまとめた記事もあわせて読んでみてください。

要件定義書、システム要件定義書、ソフトウェア要件定義書が工程のどこで作られるかを並べた図解

要件定義書には何が書いてある?よくある章立て

章立ての考え方

「なぜ作るのか」から始めて、「何を作るのか」「どのくらいの品質で動かすのか」「まだ決まっていないこと」の順に並べるのが一般的です。

会社ごとに様式は違いますが、よく見かける章立てがあります。

初めて開く要件定義書でも、この並びを知っていれば迷いにくくなりますよ。

章書くこと例(架空の勤怠管理システムの場合)
背景・目的なぜこのシステムが必要か紙の出勤簿の集計に毎月手間がかかっている
現状の課題(As-Is)今の業務とその困りごと集計を担当者が手で転記している
目指す姿(To-Be)導入後の業務打刻データが自動で集計される
対象範囲今回やること、やらないこと給与計算との連携は今回の範囲外
業務要件業務フローと業務の一覧打刻、修正申請、承認、月次締め
機能要件機能・画面・帳票・データ・外部連携打刻画面、月次集計表
非機能要件性能・可用性・セキュリティなど始業時刻に打刻が集中しても止まらない
移行要件旧データの移し方過去の出勤簿データの取り込み
運用・保守要件動かし始めた後の体制問い合わせ窓口と対応時間
制約条件・前提守るべき条件社内のネットワーク内で使う
用語集社内用語の意味「締め」の定義
未決事項・課題一覧まだ決まっていないこと休日出勤の扱いは次回の会議で決める
承認欄誰が合意したか発注側と開発側の責任者

上の例はあくまで架空の題材です。

実際の章立ては案件の大きさで増えたり減ったりします。

機能要件と非機能要件は分けて書きます

機能要件は、システムが「何をするか」です。

非機能要件は、「どのくらいの品質で動くか」です。

『非機能って、何を書けばいいのか見当がつかない』という声はとても多いんです。

そんな時に頼りになるのが、IPAの「非機能要求グレード」です。

大項目は可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つで、それぞれのレベルを0〜5の段階から選んでいきます。

補足

非機能要求グレードは、発注側と開発側が非機能の話をそろえやすくするための道具です。
全部の項目を埋める必要はなく、自分たちの案件に関係する項目から話し合えば大丈夫です。

要件定義書と一緒に作る資料もあります

要件定義の工程で作るのは、要件定義書一冊だけとは限りません。

本文に全部を書き込むと読みにくくなるので、一覧や図は別の資料にして、要件定義書から参照する形がよく使われます。

資料役割
業務フロー図(As-Is/To-Be)今と導入後の業務の流れを図で見せる
機能一覧作る機能を一覧にする
画面一覧・画面遷移のイメージ画面の数とつながりを見せる
帳票一覧出力する帳票をまとめる
データ項目一覧扱うデータの項目をそろえる
外部インターフェース一覧ほかのシステムとのやり取りをまとめる
課題管理表・議事録決めたことと決まっていないことを残す

こうした要件定義資料をまとめて「要件定義の成果物」と呼ぶこともあります。

成果物ごとの中身は、要件定義の成果物一覧でまとめています。

各章の具体的な書き方は、要件定義書の書き方で手順にしています。

読み手ごとに「どの章を見るか」は違います

ここが大事なところです

要件定義書は、一人の読者のために書く文書ではありません。
経営層、利用部門、開発チームなど、読む人ごとに気にする章が違います。

要件定義書は分厚くなりがちなので、全員が最初から最後まで読むとは限りませんよね。

だからこそ、誰がどの章を見るのかを先に知っておくと、書く側も読む側も楽になります。

読み手主に見る章気にしていること
経営層・決裁者背景・目的、対象範囲、制約条件投資する意味があるか、範囲は妥当か
利用部門(業務の担当者)業務要件、機能要件、画面のイメージ自分の仕事がどう変わるか
情報システム部門・社内SE非機能要件、運用・保守要件、移行要件動かし始めた後に困らないか
開発チーム(SE・PM)機能要件、非機能要件、未決事項設計に進めるだけの情報があるか
テスト担当機能要件、非機能要件何をもって合格とするか
監査・セキュリティ担当非機能要件のセキュリティ、制約条件社内の決まりを守っているか

この表は、編集部が一般的な役割分担をもとにまとめたものです。

会社によっては一人が何役も兼ねることもあります。

読み手を意識すると、書き方が変わります

例えば、経営層が読む「背景・目的」に専門用語を並べても、意味が伝わりにくいですよね。

逆に、開発チームが読む機能要件に「使いやすくする」とだけ書いても、何を作ればいいか分かりません。

読み手を意識した見直しのチェック
  • 背景・目的は、ITに詳しくない人でも読める言葉で書いたか
  • 業務要件は、利用部門が「自分の仕事だ」と分かる書き方になっているか
  • 機能要件は、開発チームが設計に進める細かさになっているか
  • 非機能要件は、テスト担当が合否を判断できる書き方になっているか
  • 未決事項は、誰がいつまでに決めるかが書いてあるか

同じ要件でも、読み手で言い回しを変えます

一つの要件を、読み手に合わせて書き分けた例を見てみましょう。

題材は、架空の勤怠管理システムで「残業の申請を承認制にする」という要件です。

読み手伝わりやすい書き方の例
経営層残業を事前に承認する流れにして、上長が状況を把握できるようにする
利用部門残業をする日は、当日の終業前までに申請画面から申請し、上長の承認を受ける
開発チーム残業申請の画面を設け、申請、承認、差し戻しの状態を持たせる。承認者は所属部署の上長とする
テスト担当承認されていない残業申請は、月次集計に残業として計上されないことを確かめる

中身は同じでも、読む人が知りたい部分に焦点が当たっていますよね。

実際の要件定義書では、本文は開発チーム向けの書き方にして、背景・目的や概要の章で経営層向けの言い方を添える、という形がよく使われます。

レビューの場で役立つ使い方

レビューの会議では、読み手ごとに見てほしい章を先に伝えておくのがおすすめです。

「利用部門の方は業務要件の章を、情シスの方は運用の章を重点的に見てください」と一言添えるだけで、指摘の質がぐっと上がります。

経営層、利用部門、社内SE、開発チーム、テスト担当がそれぞれ要件定義書のどの章を重点的に読むかを対応づけた図解

良い要件定義書と、困る要件定義書はどこが違う?

判断の目安

良い要件定義書は、読んだ人によって解釈がぶれず、あとで確かめられる書き方になっています。

要件の良し悪しには、国際規格の考え方が参考になります。

要求工学の国際規格 ISO/IEC/IEEE 29148 では、良い要件の性質として次のようなものがよく挙げられます。

性質意味困る書き方の例良い書き方の例
必要である目的に必要なことだけ書くあれば便利そうな機能を全部並べる目的につながる機能だけを載せる
あいまいでない誰が読んでも同じ意味になる「すばやく表示する」「一覧画面は、操作後に待たされずに表示する。目標値は非機能要件の章で決める」
検証できるテストで確かめられる「使いやすい画面にする」「入力項目に必須の印を付ける」
実現できる予算・期間・技術で作れる範囲を決めずに全業務を対象にする対象範囲の章で今回の業務を明記する
矛盾しないほかの要件とぶつからない別の章で違う締め日を書く用語集で締め日を一つに決める
単一一つの要件に一つのことだけ一文に機能を三つ詰め込む一つずつ番号を振って分ける
追跡できるどの要求から来たか分かる出どころが分からない要件がある要件に番号を付け、元の要求と結ぶ

『そこまで細かく書く時間はない』と感じた方もいるかもしれません。

ただ、ここを曖昧にすると、後の工程で確認や手戻りが増えてしまうことも。

よくある失敗

「現行システムと同じ」とだけ書いて済ませてしまうケースです。
現行の機能を書き出しておかないと、何が「同じ」なのか人によって受け取り方が変わります。

要件定義書は、作った後も使われ続けます

要件定義書は、承認されたら引き出しにしまう文書ではないんです。

V字モデルという考え方では、左側の要件定義・設計と、右側のテストを対応させて見ます。

その中で、要件定義書の内容は、発注側が行う受入テストで「ちゃんと実現できたか」を確かめる基準になります。

要件定義書がたどる流れ
  1. 関係者で中身を話し合い、承認欄で合意する
  2. 開発側が基本設計の材料として読む
  3. 途中で変更があれば、変更の記録とともに更新する
  4. 受入テストの観点として、発注側が確かめる
  5. 運用が始まってからも、仕様の確認や次の改修の土台として使う

何のソフトで作ればいいの?

要件定義書を作る道具に、決まりはありません。

文章が中心の章は文書作成ソフト、一覧が中心の機能要件や課題管理は表計算ソフト、業務フローは作図ツール、と使い分けている現場が多いです。

大事なのは、関係者全員が開いて読めて、最新版がどれか分かることです。

要件定義ガイド

まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例

章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。

無料要件定義書のテンプレートを見る

当サイトの記事ページに移動します。

よくある相談に答えます

ここでは、要件定義書についてよく寄せられる相談を要約して、編集部の考えをお答えします。

相談1:機能要件と非機能要件は書けたが、ほかの章が分からない

背景・課題・目的・方針・概要・機能という項目立てで書き始めたものの、機能まわり以外の章に何を書けばいいか迷っている、という相談です。

機能要件と非機能要件まで書けているなら、中心部分はもうできています。

残りで抜けやすいのは、「対象範囲」「移行要件」「運用・保守要件」「未決事項」の4つです。

特に「今回やらないこと」を書いておくと、後から範囲が広がるのを防ぎやすくなります。

相談2:要件定義書や基本設計書は何のソフトで書くもの?

文書作成ソフト、表計算ソフト、プレゼン用ソフトのどれで書くのが普通なのか知りたい、という相談です。

結論から言うと、会社や案件で決まっていることが多いので、まずは社内の過去の要件定義書を見せてもらうのが近道です。

決まりがない場合は、文章の章は文書作成ソフト、一覧は表計算ソフトにして、全体の目次から各ファイルへたどれるようにしておくと読みやすくなります。

相談3:要件定義書からテスト仕様書を作れと言われたが、普通のこと?

要件定義書をもとにテスト仕様書やテストデータを作るよう指示され、そんなやり方があるのか戸惑っている、という相談です。

はい、珍しいことではありません。

要件定義書に書いた要件は、受入テストやシステムテストで「できているか」を確かめる元になります。

一つずつの要件に「何をしたら合格か」を書き添えていくと、テストの観点が作りやすくなりますよ。

よくある質問

要件定義書とは、一言でいうと何ですか?

システムで実現することを、発注側と開発側で合意して書き残した文書です。設計・開発・テストの土台になります。

システム要件定義書と要件定義書は別に作るべきですか?

案件の大きさ次第です。小さな案件では一冊にまとめることが多く、大きな案件では業務側とシステム側で分けることもあります。

ソフトウェア要件定義書には何を書きますか?

ソフトウェアごとの振る舞い、入力と出力、処理の条件などを書きます。システム要件定義書で決めたことを、ソフトウェア単位に分けて詳しくするイメージです。

要件定義書は誰が書くものですか?

契約の形や会社によって変わります。発注側が要求をまとめ、開発側が要件の形に整えて、両者で合意するという進め方がよく見られます。

まとめ

この記事の要点
  • 要件定義書は、システムで実現することを関係者で合意して書き残した文書
  • 要件定義書、システム要件定義書、ソフトウェア要件定義書は、書く目線が違う
  • 章立ては「なぜ作るか」から「まだ決まっていないこと」までが一般的
  • 読み手ごとに見る章が違うので、読み手を意識して書くと伝わりやすい
  • 完成した要件定義書は、受入テストや運用まで使われ続ける

実物の形を見てみたい方は、要件定義書の例とテンプレートで各章の記入例を確認してみてください。

要件定義ガイド

要件定義ガイド 編集部

システム開発の要件定義について、意味・進め方・要件定義書の書き方とテンプレート・必要なスキルを実務目線でまとめている情報サイトです。 公式サイト

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