要件定義書の例とテンプレート|各章の記入例をそのまま使える形で

要件定義書の例とテンプレートを記入例つきで紹介する記事のアイキャッチ

当サイトの記事は編集部がIPAなど公的機関の公開資料と読者の声を調べて独自に執筆しています。

要件定義書を書く前に、まずは完成した形の例を見てみたいですよね。

結論から言うと、テンプレートは「章立て」だけでなく「各章にどんな一文が入るか」まで見ると、一気に書きやすくなります。

この記事では、要件定義書の例として、章ごとに記入例を添えたテンプレートと、システム要件定義書の書き方の例を紹介します。

目次

要件定義書の例を見る前に知っておきたいこと

先に結論

テンプレートは、そのまま埋めるための用紙ではなく、書き漏れを防ぐためのチェック表として使うのがおすすめです。
案件に合わない章は、削ったり統合したりしてかまいません。

要件定義書とは、システムで何を実現するかを、発注側と開発側で合意して書き残した文書です。

会社ごとに様式は違うので、「これが正解」という一つの形はないんです。

『じゃあ、何を見本にすればいいの?』と思いますよね。

この記事では、よく使われる章立てをもとに、編集部が架空の題材で記入例を書きました。

この記事の例で使う題材

記入例は、架空の「社内の会議室予約システムを新しく作る場合」で統一しています。

紙の予約表と表計算ソフトで管理している会議室の予約を、システムに置き換えるという想定です。

項目想定(架空)
今の困りごと予約の重なりが起きやすく、空き状況を総務部に電話で確かめている
使う人社員、総務部の担当者、情報システム部門
やりたいこと社員が自分で空きを見て予約できるようにする
今回やらないこと社外の人の予約、備品の貸し出し

テンプレートを使う順番

テンプレートを手にしたら、いきなり上から埋めていくより、次の順で進めるほうが早く仕上がります。

テンプレートから要件定義書を作る順番
  1. 早見表を見て、今回の案件に要る章と要らない章に印をつける
  2. 背景・目的と対象範囲だけ先に書き、関係者に見せる
  3. 今の業務と目指す業務を書き出す
  4. 業務要件、機能要件、非機能要件の順に書く
  5. 決まっていないことを未決事項に移す
  6. 読み手ごとにレビューを受けて、承認欄で合意する

先に目的と範囲を合わせておくと、後の章を書き直す手間が減るんです。

要件定義書そのものについて先に知りたい方は、要件定義書とはで中身と読み手ごとの見方を説明しています。

要件定義書のテンプレート早見表:各章に記入例を1行ずつ

ここが大事なところです

各章の「書くこと」と「記入例1行」を並べて見ると、どの章に何を書けばいいかがすぐ分かります。
まずはこの1行を自分の案件の言葉に置き換えるところから始めてみてください。

よく使われる章立てに、架空の会議室予約システムの記入例を1行ずつ添えました。

章書くこと記入例1行(架空)
背景・目的なぜ今このシステムが必要か予約の重なりと電話での確認をなくし、社員が自分で予約できるようにする
現状の課題(As-Is)今の業務と困りごと総務部が紙の予約表を表計算ソフトに転記しており、更新が遅れることがある
目指す姿(To-Be)導入後の業務社員は画面で空きを確認して予約し、総務部は例外の対応だけを行う
対象範囲やること、やらないこと本社の会議室の予約を対象とし、社外の人の予約と備品の貸し出しは対象外とする
業務要件誰が、いつ、何を、どの基準で社員は利用日の前日までに予約し、会議が中止になったらその日のうちに取り消す
機能要件画面、帳票、データ、処理、連携空き状況の一覧画面で、日付と会議室を選んで予約を登録できる
非機能要件性能、可用性、セキュリティなど社内のネットワークからだけ利用でき、社員の認証を通った人だけが予約できる
移行要件旧データの扱い稼働日以降の予約を、紙の予約表からシステムに登録し直す
運用・保守要件稼働後の体制予約の重なりや操作の問い合わせは総務部が受け付ける
制約条件・前提守るべき条件社内の情報セキュリティの規程に従う
用語集社内用語の意味「仮予約」は、総務部の確認を待っている予約を指す
未決事項・課題一覧決まっていないこと役員会議を優先する扱いは、総務部が次回の会議までに決める
承認欄誰が合意したか総務部長と開発側の責任者が、版と日付を書いて承認する

上の表は、案件の規模にかかわらず使える基本形です。

章の名前は会社によって違うこともあるので、社内の呼び方に合わせて読み替えてください。

要件定義書テンプレートの章を、なぜ作るか、何を作るか、どのくらいの品質か、決まっていないことの順にまとめた図解

テンプレート本文の例:そのまま写して書き換えられる形

使い方

ここでは、早見表の中から特によく使う章を、文書の形で書いてみました。
自分の案件に合わせて、題材の部分だけを書き換えて使ってみてください。

背景・目的の例

  • 背景:本社の会議室は総務部が紙の予約表で管理しており、予約の重なりや確認の電話が日常的に起きている。
  • 目的:社員が自分で空き状況を確かめて予約できるようにし、総務部の確認の手間を減らす。
  • 期待する効果:予約の重なりを減らし、会議の準備にかかる手間を少なくする。

背景と目的は、それぞれ2〜3行で十分です。

効果の数字が決まっていない時は、無理に書かずに「何が良くなるか」だけ書いておきましょう。

対象範囲の例

  • 対象とする:本社の会議室の予約、変更、取り消し、空き状況の確認
  • 対象としない:社外の人の予約、備品の貸し出し、ほかの拠点の会議室
  • 次の段階で検討する:予定表との連携

「対象としない」を書いておくと、レビューの場でのやり取りが早く片づきます。

例えば、こんな確認がその場で終わるんです。

「ほかの拠点の会議室も、今回まとめて入れられませんか?」
「今回は本社だけと範囲に書いてあるので、次の段階で検討しましょう」

現状の課題と目指す姿の例

場面今(As-Is)導入後(To-Be)
空きの確認総務部に電話やメールで聞く社員が画面で空き状況を見る
予約の登録総務部が紙の予約表に書き、あとで表計算ソフトに転記する社員が画面から登録し、そのまま反映される
重なりの確認総務部が目で見て確かめる同じ時間帯には登録できない
取り消し社員が総務部に連絡し、総務部が消す社員が自分で取り消す

As-IsとTo-Beを場面ごとに並べると、何が変わるのかが一目で伝わります。

利用部門の方がレビューで「自分の仕事がどう変わるか」を確かめやすくなるのもうれしいところです。

業務要件の例

番号誰がいつ何を基準
業務1社員利用日の前日まで会議室を予約する同じ時間帯に重ねて予約できない
業務2社員会議が中止になった日予約を取り消すその日のうちに取り消す
業務3総務部毎朝当日の予約を確認する仮予約が残っていないか見る

業務要件は、主語のある短い文で書くのが大切です。

表にすると、抜けている項目に気づきやすくなりますよ。

移行要件と運用・保守要件の例

  • 移行要件:稼働日より後の予約は、総務部が紙の予約表からシステムに登録し直す。登録が終わったら紙の予約表の受付を止める。
  • 運用・保守要件:操作の問い合わせは総務部が受け付け、システムの不具合は情報システム部門が開発側に連絡する。
  • 運用・保守要件:会議室の追加や名称の変更は、総務部が管理画面から行う。

小さなシステムでも、稼働した後に「誰に聞けばいいか」が書いてあると、現場が困りません。

用語集の例

用語この要件定義書での意味
仮予約総務部の確認を待っている予約
本予約総務部の確認が済み、確定した予約
利用日会議室を実際に使う日
取り消し利用する前に、予約を無効にすること

社内で当たり前に使っている言葉ほど、開発チームには伝わらないことがあります。

意味が二通りに取れそうな言葉は、ここで一つに決めておきましょう。

未決事項の例

番号決まっていないこと担当期限の目安
未決1役員会議を優先する扱い総務部次回の会議まで
未決2予約できる期間の上限総務部と情報システム部門基本設計に入る前まで

『未決事項を書くと、準備不足に見えないかな』と心配になる方もいるかもしれません。

実は逆で、決まっていないことを隠さずに書いてある要件定義書のほうが、関係者から信頼されやすいんです。

各章をもっと詳しく書く手順は、要件定義書の書き方で紹介しています。

システム要件定義書の例:機能要件と非機能要件

書き方の例

機能要件は一覧にして番号を振り、非機能要件は大項目ごとに目標と確かめ方を書きます。

ここからは、システム要件定義書でよく使う一覧の例です。

業務側の要件定義書とまとめて一冊にしている場合は、機能要件と非機能要件の章にあたります。

機能一覧の例

番号機能内容元になった業務要件
機能1空き状況の表示日付と会議室を選ぶと、時間帯ごとの空きを表示する業務1
機能2予約の登録空いている時間帯を選んで予約を登録する業務1
機能3重なりの防止すでに予約がある時間帯は登録できない業務1
機能4予約の取り消し自分の予約を取り消す業務2
機能5当日の予約一覧総務部が当日の予約と仮予約を一覧で見る業務3

「元になった業務要件」の列があると、なぜその機能が必要なのかを後からたどれます。

要求工学の国際規格 ISO/IEC/IEEE 29148 でも、良い要件の性質として「追跡できる」ことが挙げられているんです。

画面一覧の例

機能一覧ができたら、画面の一覧も作っておくと、利用部門が完成の姿を思い描きやすくなります。

画面使う人主な操作関係する機能
空き状況の一覧画面社員日付と会議室を選んで空きを見る機能1
予約の登録画面社員時間帯と用件を入力して登録する機能2、機能3
自分の予約の一覧画面社員予約を確かめ、取り消す機能4
当日の予約一覧画面総務部当日の予約と仮予約を確かめる機能5
会議室の管理画面総務部会議室の追加や名称の変更をする運用・保守要件

『画面の細かい配置まで決めないといけないの?』と思うかもしれませんね。

要件定義の段階では、画面の数と、それぞれで何ができるかが分かれば十分です。

配置や項目の並びは、基本設計で詰めていきます。

非機能要件の例

非機能要件は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「非機能要求グレード」の大項目を見出しにすると書き漏れが減ります。

大項目は、可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つで、それぞれ0〜5の段階からレベルを選ぶ方式です。

大項目記入例(架空)確かめ方の例
可用性平日の業務時間中は利用できること停止してよい時間帯を運用・保守要件で決める
性能・拡張性朝の始業時に予約が集中しても操作できること目標値は基本設計に入る前に決める
運用・保守性会議室の追加や名称変更を総務部が画面から行えること総務部の担当者が操作して確かめる
移行性稼働日以降の予約を登録し直せること移行の手順を予行して確かめる
セキュリティ社員の認証を通った人だけが使えること認証していない状態で使えないことを確かめる
システム環境・エコロジー社内のネットワーク内で動くこと社外からつながらないことを確かめる

この例では数字をあえて入れていません。

目標の数字は、現状を測ったうえで発注側と開発側で話し合って決めるのが基本だからです。

「朝はどのくらいの人が同時に予約しそうですか?」
「始業前に集中するので、まずは今の予約表の使われ方を調べてみます」

こうしたやり取りを経て、数字を埋めていきます。

システム要件定義書の機能一覧と非機能要件の6つの大項目を、記入例とともに並べた図解

テンプレートを自分の案件に合わせる時の注意

よくある失敗

テンプレートの章を全部埋めることが目的になり、中身の薄い章がたくさんできてしまうケースです。
読む人にとって必要な章だけを、必要な細かさで書くほうが伝わります。

テンプレートは便利ですが、そのまま使うと案件に合わない部分も出てきますよね。

規模ごとの目安を表にしました。

案件の規模残したい章削ったり統合したりしてよい章
表計算ソフトのマクロなど小さなツール目的、範囲、機能、未決事項移行要件、運用・保守要件、用語集
一つの部署で使う業務システム背景・目的、範囲、業務要件、機能要件、非機能要件、未決事項制約条件は前提とまとめてよい
複数の部署やほかのシステムとつながる案件すべての章削らずに、資料を分けて参照する形にする

書き換える前のチェック

テンプレートを使う前に確かめること
  • 社内に決まった様式がないか確かめた
  • 今回の案件に関係ない章を見分けた
  • 記入例の題材を、自分の案件の言葉に置き換えた
  • 業務フロー図や機能一覧など、別の資料にする部分を決めた
  • 承認する人と、承認の手順を確かめた

版の管理も、テンプレートに入れておく

要件定義書は、レビューのたびに少しずつ書き換わっていきます。

表紙か冒頭に「版」「日付」「変えた内容」「変えた人」を書く欄を用意しておくと、どれが最新かで迷いません。

版日付変えた内容変えた人
初版作成した日新規に作成総務部の担当者
改訂版レビュー後の日対象範囲に「ほかの拠点は対象外」を追記総務部の担当者

承認した後に変更が出た場合も、この欄に残しておけば、受入テストの時に「どの版の要件で確かめるか」がはっきりします。

一緒に用意しておきたい資料

要件定義書の本文だけでは伝えきれない部分は、別の資料にして参照します。

業務フロー図、画面一覧、帳票一覧、データ項目一覧、外部インターフェース一覧、課題管理表、議事録などがよく使われます。

どの資料が必要かは、要件定義の成果物一覧でまとめています。

例を読むときに見ておきたいところ

ほかの人が書いた要件定義書の例を読む時は、次の点に注目すると学びが多くなります。

  • 背景・目的と、機能要件がつながっているか
  • 「今回やらないこと」がどう書かれているか
  • 非機能要件に、確かめ方が書いてあるか
  • 未決事項に、担当と期限が書いてあるか

上手な例ほど、書いてある量より、つながりがはっきりしているんです。

よくある相談に答えます

要件定義書の例やテンプレートについて、よく寄せられる相談を要約してお答えします。

相談1:企画書は書けるが、システムの全体像を図にする方法が分からない

企画書は書いてきたものの、Webアプリケーションの全体像を示す図を求められて、何を描けばいいか迷っている、という相談です。

全体像の図は、まず「誰が使うか」と「何とつながるか」から描き始めると楽になります。

中央にシステムを置き、周りに利用者、ほかのシステム、扱うデータを並べて線でつなげば、最初の形としては十分です。

細かい構成は、基本設計や方式設計で詰めていくので、要件定義の段階では全体の関係が伝われば大丈夫です。

相談2:要件定義の費用は、発注側と開発側のどちらが持つもの?

システムを入れたい会社と、作る会社のあいだで、要件定義にかかる費用をどう扱うのか知りたい、という相談です。

契約の形によって変わる、というのが答えになります。

受託開発では、要件定義を準委任契約、設計以降を請負契約に分けて結ぶ例もあります。

見積もりを取る時は、何人が、どのくらいの期間で、どの成果物を作るのか、内訳で比べてみてください。

相談3:現場の課題を聞き出してシステムにする方法を学びたい

仕事で現場の困りごとを聞き取り、システム化の形にまとめる力をつけたい、という相談です。

いちばんの近道は、実際の要件定義書の例を読んで、自分の案件で書いてみることです。

公的な資料なら、IPAが2019年に公開した発注側向けの要件定義の手引きが、問題と解決のヒントをペアで説明していて読みやすいですよ。

IPAの公開ページから読むことができます。

よくある質問

要件定義書の例は、そのまま使ってもいいですか?

章立てと書き方の参考として使うのがおすすめです。記入例の題材は自分の案件の言葉に置き換え、合わない章は削ったり統合したりしてください。

システム要件定義書の例で、いちばん大事な部分はどこですか?

機能一覧と非機能要件です。機能には番号を振って元の業務要件とつなげ、非機能要件には確かめ方を書いておくと、設計やテストで迷いにくくなります。

要件定義の書き方の例を見ても、自分の案件でうまく書けません。

まずは早見表の記入例1行を、自分の案件の言葉に置き換えるところから始めてみてください。全部の章を一度に書こうとせず、背景・目的と対象範囲を先に関係者と確かめると進めやすくなります。

要件定義書の例はどこで見られますか?

まずは社内の過去の要件定義書を見せてもらうのがいちばんです。社内に無い場合は、この記事の早見表や、題材を一つに絞った具体例の記事を参考にしてみてください。

テンプレートの章は、全部埋める必要がありますか?

ありません。小さな案件では、目的、範囲、機能、未決事項だけでも役立ちます。大きな案件ほど章を増やし、別の資料にして参照する形にします。

まとめ

この記事の要点
  • テンプレートは、書き漏れを防ぐチェック表として使う
  • 各章に記入例を1行添えた早見表を見ると、書くことが分かりやすい
  • 機能要件は番号を振り、元になった業務要件とつなげる
  • 非機能要件は6つの大項目を見出しにして、確かめ方まで書く
  • 案件の規模に合わせて、章を削ったり統合したりする

題材を一つに絞って、業務要件から非機能要件まで通しで書いた例は、要件定義の具体例で読めます。

要件定義ガイド

要件定義ガイド 編集部

システム開発の要件定義について、意味・進め方・要件定義書の書き方とテンプレート・必要なスキルを実務目線でまとめている情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次