要件定義の成果物一覧と中身|誰が承認していつ使うかの表つき

要件定義の成果物の一覧と承認者を紹介する記事のアイキャッチ

当サイトの記事は編集部がIPAなど公的機関の公開資料と読者の声を調べて独自に執筆しています。

要件定義の工程に入ったものの、「結局、何を作って納めればいいの?」と手が止まっていませんか。

結論から言うと、要件定義の成果物は「要件定義書」を中心に、業務フロー図や機能一覧などの資料を組み合わせたものです。

この記事では、成果物の一覧と中身に加えて、それぞれを誰が承認していつ使うのかまで表で紹介します。

目次

要件定義の成果物とは?まず全体像をつかもう

先に結論

要件定義の成果物は、「決めたこと」を関係者があとで確かめられる形に残した資料の集まりです。
中心は要件定義書で、その中身を図や一覧で補う資料が周りに並びます。

要件定義(RD:Requirements Definition)は、システムで何を実現するかを関係者で決める工程です。

そこで決めた内容を書き残したものが、要件定義の成果物なんです。

『要件定義書を一冊作れば終わりでは?』と思う方もいるかもしれませんね。

実は、要件定義書の本文だけに全部を書き込むと、何十ページにもなって誰も読まなくなります。

そこで、図にしたほうが分かる流れは業務フロー図に、番号で管理したい機能は機能一覧に、と分けて作るのが一般的です。

要件定義の成果物の一覧

よく作られる成果物を並べると、次のようになります。

成果物中身主な形式
要件定義書背景・目的、範囲、業務要件、機能要件、非機能要件などをまとめた本体文書
業務フロー図(As-Is/To-Be)今の業務と目指す業務の流れを、部署ごとのレーンで描いた図図
機能一覧システムが持つ機能に番号を振って並べた表表
画面一覧・画面遷移のイメージどんな画面があり、どう移り変わるかの見取り図表と図
帳票一覧出力する書類や一覧表の種類と使い道表
データ項目一覧扱うデータの項目と意味(概念データモデル)表と図
外部インターフェース一覧ほかのシステムとやり取りするデータと相手表
非機能要件一覧性能・可用性・セキュリティなどの目標表
課題管理表決まっていないこと、担当者、期限表
議事録会議で決まったことと、その理由文書

会社ごとに呼び方や分け方は違うので、社内の過去の案件で使われた様式があれば、それに合わせるのが近道です。

要件定義書そのものの役割を先に知りたい方は、要件定義書とはもあわせてどうぞ。

成果物は「要件定義の後」に使われる

成果物は、作った時点ではなく、その後の工程で読まれて初めて役に立ちます。

例えば、基本設計では機能一覧と画面一覧が設計の出発点になります。

受入テストでは、要件定義書に書いた条件を発注側が一つずつ確かめます。

だからこそ、「後で読む人が困らないか」を基準に、どの成果物を作るか決めてみてください。

成果物ごとの中身を、例で見てみましょう

ここが大事なところです

同じ名前の成果物でも、書く細かさは案件によって変わります。
迷った時は「次の工程の人が、これを見て作業を始められるか」で判断してみてください。

ここでは、架空の「社内の契約書管理を、紙の台帳からシステムに移す場合」を例にします。

契約書の受付、保管、更新期限の確認までを扱う、小さめの案件です。

要件定義書は「目次」の役割も持つ

要件定義書は、ほかの成果物を束ねる本体です。

本文には要点だけを書き、細かい一覧は別の資料に分けて「別紙参照」とつなぐと読みやすくなります。

章記入例(架空)
背景・目的契約書の更新期限を台帳で手作業で確認しており、期限切れに気づくのが遅れることがあるため、期限の確認を自動化する
対象範囲契約書の登録、検索、更新期限のお知らせを対象とし、電子署名は今回の対象外とする
業務要件法務担当は、契約書を受け取った日のうちに登録する
機能要件別紙「機能一覧」を参照
非機能要件別紙「非機能要件一覧」を参照
未決事項別紙「課題管理表」を参照

書き方そのものは、要件定義書の書き方で章ごとに詳しく紹介しています。

業務フロー図は、今と後の2枚を並べる

業務フロー図は、契約書が届いてから保管されるまでの流れを、部署ごとのレーンに分けて描く図です。

今の流れ(As-Is)と、システム導入後の流れ(To-Be)の2枚があると、何が変わるのかがひと目で分かります。

「営業部が受け取った契約書を、法務担当に回す時はどうしていますか」
「社内便で送って、法務担当が台帳に手で書き写しています」

こんなやり取りで出てきた手順を、そのまま図の箱にしていくイメージです。

描き方のコツは、要件定義の業務フロー図の書き方でまとめています。

機能一覧には番号を振る

機能一覧は、システムが持つ機能を1行1機能で並べた表です。

番号があると、レビューや変更の場面で「どの機能の話か」がすぐに伝わります。

番号機能使う人内容(例)
F-01契約書の登録法務担当契約の相手、期間、更新期限、原本の保管場所を登録する
F-02契約書の検索法務担当、営業部相手先名や期限で契約書を探す
F-03更新期限のお知らせ法務担当、担当営業更新期限が近づいた契約を、担当者に知らせる
F-04閲覧の制限管理者部署ごとに見られる契約書を分ける

画面・帳票・データの一覧は「粒度」をそろえる

画面一覧や帳票一覧、データ項目一覧は、要件定義では「何があるか」までで十分なことが多いです。

ボタンの配置や項目の並び順は、基本設計で決める話なんですね。

例えば契約書の登録画面なら、「相手先名、契約期間、更新期限、保管場所を入力する」までを要件定義で決めておきます。

補足

データ項目一覧は、概念データモデルと呼ばれる図で表すこともあります。
「契約書」「相手先」「担当者」のような、扱うものどうしのつながりを描いた図です。

非機能要件一覧は、項目をそろえてから考える

非機能要件は、「どのくらいの品質で動くか」を決めたものです。

IPAの「非機能要求グレード」では、可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つの大項目に分けて考えます。

各項目のレベルを0〜5の段階から選ぶ方式なので、抜け漏れの確認にも使えますよ。

要件定義書を中心に、業務フロー図や機能一覧などの成果物が周りに並ぶ関係を示した図解

成果物ごとに「誰が承認し、いつ使うか」を決めておく

先に結論

成果物は、作る人だけでなく「承認する人」と「使う場面」を決めておくと、後で揉めにくくなります。
誰がOKを出したのか分からない資料は、後の工程で根拠として使いにくいからです。

成果物を一覧にした時、意外と抜けやすいのが承認者です。

『全部、プロジェクトの責任者に見てもらえばいいのでは?』と思いますよね。

ただ、業務の流れは利用部門の責任者でないと判断できませんし、性能の目標は運用の担当者でないと決められません。

成果物ごとに、中身を判断できる人に承認してもらうのが自然です。

承認者と使う場面の一覧表(例)

架空の契約書管理の案件で、成果物ごとの承認者と使う場面を書くと、次のようになります。

成果物主に作る人承認する人(例)主に使う場面
要件定義書開発側のSE、発注側の担当者発注側のプロジェクト責任者契約、基本設計、受入テスト
業務フロー図発注側の担当者、開発側のSE利用部門の責任者業務の変更の説明、運用手順の作成
機能一覧開発側のSE発注側の担当者基本設計、見積もりの見直し、テスト計画
画面一覧・帳票一覧開発側のSE利用部門の代表者基本設計、操作説明書の作成
データ項目一覧開発側のSE発注側の担当者基本設計、データ移行
外部インターフェース一覧開発側のSE相手システムの担当者連携の設計、結合テスト
非機能要件一覧開発側のSE発注側の責任者、運用の担当者方式設計、システムテスト、運用の準備
課題管理表双方の担当者定例会議で確認未決事項の追いかけ
議事録会議の書記役出席者全員決めた理由の確認

承認の形は、押印や電子承認でも、議事録に「承認」と残す形でも構いません。

大事なのは、あとで「誰がいつOKを出したか」をたどれることなんです。

使う場面から逆算すると、作りすぎを防げる

この表を作っておくと、「この資料、誰も使わないのでは」という成果物にも気づけます。

例えば、外部のシステムとつながない案件なら、外部インターフェース一覧はいりません。

逆に、紙の台帳からデータを移すなら、データ項目一覧はかなり大事になります。

成果物を決める時の確認
  • 成果物ごとに、承認する人が決まっているか
  • 次の工程で、どの場面で使うのかを説明できるか
  • 同じ内容を二つの資料に書いていないか
  • 誰も使わない成果物を作ろうとしていないか
  • 置き場所と、最新版がどれかが決まっているか
成果物ごとに作る人、承認する人、使う場面をつないだ対応表の図解

システム開発・業務要件定義・アジャイルで成果物はどう違う?

先に結論

成果物の名前は似ていても、何を中心に作るかは進め方や目的で変わります。
ここでは、よく比べられる三つの場面で違いを見てみましょう。

一口に要件定義の成果物といっても、案件の種類によって重みが変わります。

『うちの案件だと、どこまで作ればいいんだろう』と迷う方も多いはずです。

システム開発の要件定義で作る成果物

システム開発で、開発会社に作ってもらう場合は、ここまでに紹介した成果物がひととおり出てきます。

システム要件定義の成果物としては、機能一覧、非機能要件一覧、外部インターフェース一覧の比重が大きくなります。

開発会社と契約を結ぶ時の根拠にもなるので、範囲や品質の条件は文章で残しておくと安心です。

なお、受託開発では要件定義を準委任契約、設計以降を請負契約に分けて契約する例もあります。

その場合、要件定義の成果物が次の契約の前提になるので、範囲の書き方がより大事になりますね。

業務要件定義で作る成果物

業務要件定義の成果物は、業務フロー図と業務一覧が中心です。

業務要件定義は「業務をどう変えるか」を決める段階なので、システムの画面より先に、誰がいつ何をするかを固めます。

成果物業務要件定義での中身(例)
業務フロー図契約書が届いてから保管、更新までの流れを部署ごとのレーンで描く
業務一覧登録、保管、更新の確認、廃棄など、業務を一行ずつ並べる
業務ルールの一覧「更新期限の一定期間前に、担当営業に確認する」のような判断の基準
用語集「原本」「写し」「更新」など、部署で意味がずれやすい言葉の定義

業務要件の決め方そのものは、業務要件定義とはで詳しく紹介しています。

アジャイル開発の要件定義で作る成果物

アジャイル開発では、短い期間で作って確かめることを繰り返します。

そのため、最初に分厚い要件定義書を作るより、プロダクトバックログに要件を並べて、少しずつ詳しくしていくことが多いです。

要件は、ユーザーストーリーという形で書かれることがよくあります。

「〈利用者〉として〈目的〉のために〈機能〉がほしい」という形の文です。

例えば「法務担当として、期限切れを防ぐために、更新期限の近い契約を一覧で見たい」のように書きます。

ウォーターフォールで重くなる成果物
  • 要件定義書の本体
  • 機能一覧と非機能要件一覧
  • 承認欄つきの確定版
アジャイルで重くなる成果物
  • プロダクトバックログ
  • ユーザーストーリーと受け入れの条件
  • スプリントごとの振り返りの記録

ただし、アジャイルでも非機能要件や外部とのつなぎ方は、早めに決めておかないと後で困ります。

詳しくはアジャイル開発の要件定義を読んでみてください。

成果物の「品質」をどう確かめる?レビューのコツ

ここが大事なところです

成果物は、そろっていても中身が確かめられなければ役に立ちません。
レビューでは「数がそろっているか」より「後で読んでも同じ意味になるか」を見ます。

成果物を作り終えると、ほっとしますよね。

ただ、ここで一度立ち止まって、中身の品質を確かめておくのがおすすめです。

良い要件の性質で見直す

国際規格のISO/IEC/IEEE 29148では、良い要件の性質として、必要である、あいまいでない、検証できる、実現できる、矛盾しない、一つのことだけを言う、追跡できる、といった点が挙げられています。

全部を一度に完璧にするのは難しいので、まずは「あいまいでない」と「検証できる」の二つから見てみましょう。

見直す点NGの例直した例
あいまいでない更新期限が近い契約を早めに知らせる更新期限の一定期間前に、担当営業と法務担当に知らせる(期間は課題管理表で決める)
検証できる検索が使いやすいこと相手先名の一部を入れると、該当する契約書が一覧で出ること
一つのことだけ契約書を登録し、期限を知らせる登録と、期限のお知らせを別の要件に分ける
追跡できる番号のない要件F-03 のように番号を振り、目的とのつながりを書く

成果物どうしの食い違いを探す

成果物を分けて作ると、資料どうしで内容がずれることがあります。

例えば、業務フロー図には「営業部も契約書を登録する」とあるのに、機能一覧の使う人が法務担当だけになっている、といったずれです。

食い違いを探す手順
  1. 業務フロー図の箱を一つずつ見て、対応する機能が機能一覧にあるか確かめる
  2. 機能一覧の各機能に、使う画面と帳票があるか確かめる
  3. 画面で入力する項目が、データ項目一覧にあるか確かめる
  4. 見つかったずれを課題管理表に書き、誰がいつ直すかを決める

この確認をしておくと、基本設計に入ってからの手戻りがぐっと減りますよ。

よくある失敗

成果物を作ることが目的になり、決まっていないことまで「決まった風」に書いてしまうケースです。
決まっていない点は課題管理表に移して、担当者と期限を書いておきましょう。

要件定義ガイド

まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例

章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。

無料要件定義書のテンプレートを見る

当サイトの記事ページに移動します。

よくある相談に答えます

要件定義の成果物について、よく寄せられる相談を要約してお答えします。

相談1:性能について、要件定義・基本設計・詳細設計でどこまで決めればいい?

性能の話を、どの工程でどの細かさまで作り込み、どんな成果物に残せばいいのか分からない、という相談です。

結論から言うと、要件定義では「業務として困らない水準」を目標として決めます。

例えば「月末に利用者が集中しても、登録の操作が業務に支障のない時間で終わること」を、具体的な目標値とあわせて非機能要件一覧に書きます。

基本設計では、その目標をどの構成で満たすかを考え、詳細設計ではプログラムの作りに落とします。

工程ごとに「決めること」が違うと考えると、ぐっと分かりやすくなりますよ。

相談2:要件定義でもめたくなければ、アジャイルにすればいい?

要件が決まらずに揉めるくらいなら、最初からアジャイルにすればいいのでは、という相談です。

アジャイルにしても、「何を作るか」を決める作業そのものは無くなりません。

決める時期と、残す成果物の形が変わるだけなんです。

プロダクトバックログの優先順位を決めるのは発注側の役割なので、決める人が決められない状態だと、アジャイルでも揉めることがあります。

相談3:社内の品質管理の仕組みに沿って、要件定義の工程はどう管理する?

社内の品質管理の決まりに沿ってシステム開発をする時、要件定義の工程は何をもって品質を確かめればいいのか、という相談です。

要件定義の工程では、成果物そのものが品質の記録になります。

「どの成果物を作るか」「誰がレビューし、誰が承認したか」「指摘をどう直したか」を残しておくと、工程の品質を説明しやすくなります。

先ほどの承認者の表に、レビューの日付と指摘の件数の欄を足すだけでも、立派な記録になりますよ。

よくある質問

要件定義の成果物で、最低限そろえるべきものは何ですか?

要件定義書、機能一覧、課題管理表、議事録の四つがあれば、小さな案件でも最低限の形になります。業務が変わる案件なら、業務フロー図も加えてみてください。

システム要件定義の成果物と、業務要件定義の成果物は別に作るのですか?

案件の大きさによります。大きな案件では分けて作ることもありますが、小さな案件では一冊の要件定義書の中で章を分けるだけでも十分です。

アジャイル開発でも要件定義の成果物は必要ですか?

必要です。ただし形は変わり、プロダクトバックログやユーザーストーリーが中心になります。非機能要件や外部とのつなぎ方は、別に一覧にしておくと安心です。

成果物の様式は決まっているのですか?

法律や規格で決まった様式はなく、会社や案件ごとに違います。公的な資料では、IPAが2019年に公開した発注側向けの要件定義の手引きが、主要な文書の作り方の参考になります。

成果物はいつ確定させればいいですか?

ウォーターフォールなら、基本設計に入る前に承認を取って確定させるのが一般的です。確定後に変える時は、変更の理由と承認を記録に残しておきましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 要件定義の成果物は、要件定義書を中心に、業務フロー図や機能一覧などで構成される
  • 成果物ごとに、承認する人と使う場面を決めておくと後で揉めにくい
  • システム開発、業務要件定義、アジャイルで、重く作る成果物が変わる
  • レビューでは「あいまいでないか」「検証できるか」と、成果物どうしのずれを見る

成果物の形をすぐに整えたい方は、要件定義書の例・テンプレートから使えそうな様式を探してみてください。

要件定義ガイド

要件定義ガイド 編集部

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