要件定義のAs-Is/To-Be分析とは?業務分析のやり方と記入表

要件定義のAs-Is/To-Be分析を差分の記入表で解説する記事のアイキャッチ

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『要件定義でAs-IsとTo-Beを書いてと言われたけど、2枚の図を描いた後に何をすればいいのか』と手が止まっている方も多いはずです。

結論から言うと、As-Is/To-Be の分析は、今と目指す姿の「差分」を1行ずつ書き出し、その差分から要件定義で決めることを拾うところまでがセットです。この記事では、差分から要件を拾う記入表を使って、業務分析の進め方をお伝えします。

目次

As-Is/To-Be分析とは?要件定義の業務分析の基本

先に結論

As-Is/To-Be分析とは、今の業務(As-Is)と目指す業務(To-Be)を比べて、その差分から必要な対応を洗い出す方法です。要件定義では、この差分が「何を決めるべきか」の一覧になります。

As-Isは「今の姿」、To-Beは「あるべき姿、目指す姿」という意味です。資料ではasis、tobeのように書かれることもあります。

要件定義全体の流れは要件定義とはで紹介しています。ここでは、要件定義の業務分析としてAs-Is/To-Beをどう使うかに絞ってお話しします。

3つの言葉の関係

As-Is/To-Be分析で出てくる言葉は、次の3つだけ覚えておけば大丈夫です。

言葉意味要件定義での使い道
As-Is今の業務の姿困りごとと、その原因を見つける
To-Be目指す業務の姿何を変えるかを決める
差分(ギャップ)今と目指す姿の違い決めること、作るもの、変えるルールの一覧になる

なぜ要件定義で業務分析をするの?

『システムを作るんだから、欲しい機能を聞けば足りるのでは』と思いますよね。ただ、欲しい機能だけを聞いて作ると、今の業務の困りごとをそのまま新しいシステムに持ち込んでしまうことがあるんです。

今の業務を知ってから目指す姿を描くと、「そもそもこの作業はいらない」「ルールを変えれば済む」といった気づきが出てきます。業務改善の要件定義で、業務分析が大事にされるのはこのためです。

業務分析で集める材料

As-Isを描く前に、手元に集めておきたい材料があります。聞き取りだけで描こうとすると、話す人の記憶に頼ることになってしまうんです。

材料(例)どこで手に入るかわかること
今使っている申請書や台帳業務部門の担当者業務で扱う項目と、記録の置き場所
社内規程や業務マニュアル総務や業務部門の責任者決まりごとの上での流れ
表計算ソフトの集計表各担当者公式の流れに出てこない作業
問い合わせやミスの記録業務部門の担当者困りごとがどこで起きているか

規程と実際の流れを見比べると、違いのある所がそのまま聞き取りの質問になります。

As-Is/To-Be分析の進め方

As-Is/To-Be分析は、次の順番で進めると迷いにくくなります。

As-Is/To-Be分析の進め方
  1. 分析する業務の範囲と、変えたい理由を決める
  2. 今の業務(As-Is)を業務フロー図に描く
  3. 困りごとと、その原因を書き出す
  4. 目指す業務(To-Be)を業務フロー図に描く
  5. 今と目指す姿の差分を1行ずつ書き出す
  6. 差分ごとに対応の種類を決め、要件に書き直す
  7. 差分が他の業務やシステムに与える影響を調べる
As-Is/To-Be分析を、範囲を決める、今を描く、目指す姿を描く、差分を書く、要件にする、の順に進める図解

業務フロー図の描き方は、要件定義の業務フロー図の書き方で詳しく紹介しています。

As-Isは「ありのまま」を描く

今の業務を描く時は、決まりごとの上での流れではなく、実際の流れを描くのがコツです。規程ではこうなっているけど、実は別のやり方をしている、ということはよくありますよね。

開発側「購入の申請は、規程どおりに課長が承認していますか」
利用部門「急ぎの時は、先に注文して後から申請を出すこともあるんです」

こうした「実際の流れ」こそ、To-Beを考える時の大事な材料です。責めるような聞き方をせず、ありのままを話してもらえる雰囲気を作っておきましょう。

困りごとは原因まで書く

As-Isを描いたら、困りごとを書き出します。この時、困りごとだけでなく「なぜそうなっているのか」まで書いておくのが大事なんです。

困りごと(例)原因(例)原因から見える対応の方向
申請から発注まで日数がかかる少額でも課長と部長の2人の承認を通している承認の段数を見直す
同じ物を別々の取引先から買っている担当がそのつど取引先を選んでいる選び方の基準を決める
過去の発注を探すのに時間がかかる記録が担当ごとの表計算ソフトに分かれている記録を一か所にまとめる

原因まで書くと、対応の方向が自然と見えてきますよね。原因がわからない困りごとは、To-Beに進む前にもう一度現場に聞いてみてください。

To-Beは「目的」から描く

目指す業務を描く時は、今の流れを少し直すことから始めるより、変えたい理由から考えるほうがうまくいきます。「何のためにこの業務があるのか」を一度言葉にしてみてください。

例えば「購入の申請」の目的が「むだな買い物を防ぐこと」なら、少額の消耗品まで同じ承認を通す必要があるのか、という問いが出てきます。

To-Beは1案に絞らなくてよい

目指す姿がすぐに1つに決まらない時は、2〜3案を並べて比べても構いません。案ごとに、変わる作業と関係する部署を書き出しておくと、決める人が判断しやすくなります。

差分から要件を拾う記入表

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。As-IsとTo-Beの図を2枚並べただけでは、要件定義は進みません。

差分を1行ずつ表に書き出し、「どう対応するか」と「要件としてどう書くか」まで埋めていきます。架空の題材として、社内の物品購入を申請してから発注するまでの業務を見直す場合の例を作ってみました。

作業(例)As-Is(今)To-Be(目指す姿)差分対応の種類要件の書き方(例)
購入の申請紙の申請書を総務に持っていく申請者が決まった様式で申請する申請の出し方が変わるシステム化申請者は品名、数量、金額、理由を入力して申請できる
承認金額に関係なく課長と部長が押印する一定額までは課長だけで承認する承認の段数が変わるルール変更部長の承認は、決めた金額を超える申請だけとする
発注先の選び方担当がそのつど取引先を選ぶ消耗品は決めた取引先から選ぶ選び方の基準ができるルール変更消耗品は登録済みの取引先から選ぶ
発注の記録担当ごとの表計算ソフトに書く全員が同じ記録を見られる記録の置き場所が変わるシステム化発注の記録を部署を問わず検索できる
急ぎの購入先に注文して後から申請する急ぎの場合の手順を決める例外の手順ができるルール変更と教育急ぎの購入は、事後申請の期限と承認者を決めておく
申請書の控え総務が紙で保管する保管をやめ、記録で代える作業がなくなるやめる申請の記録は決めた期間保管し、紙の控えは作らない
As-Isの列、To-Beの列、差分の列、対応の列、要件の列を横に並べた記入表の図解

左から右へ読むと、「今こうで、こう変えたいから、これを決める」という流れが1行で追えますよね。表の金額や期限は、業務部門と相談して決めていきます。

対応の種類は4つに分ける

差分には、システムを作らなくても解決できるものがたくさんあります。対応の種類を書いておくと、何でもシステムで解決しようとする流れを止められるんです。

対応の種類どんな差分に使うか要件定義での扱い
システム化書き写しや受け渡しの手間、記録の共有システム要件の候補として書く
ルール変更承認の段数、判断の基準、選び方業務ルールとして書き、責任者の合意を取る
教育や周知新しい手順を知らない、例外の扱いがばらばら移行や運用の要件として書く
やめる目的がなくなった作業、二重の確認やめることを業務要件として書く

「やめる」も立派な要件です。やめると決めた作業は、新しいシステムに引き継がないよう業務要件定義書に書いておきましょう。

差分に優先順位をつける

差分を書き出すと、思ったより行数が多くなることがあります。全部を一度に変えようとすると、予算も期間も足りなくなってしまいますよね。

そんな時は、効果の大きさと、変える手間の2つで差分を並べてみてください。

区分効果手間進め方の目安(例)
まず取り組む大きい小さい承認の段数の見直しのように、ルールを変えるだけで済むもの
計画して取り組む大きい大きい発注の記録をまとめるように、システム化が要るもの
手が空いたら取り組む小さい小さい申請書の様式の細かい見直し
見送る小さい大きい使う人が限られる機能の追加

見送ると決めた差分も、消さずに記入表に残しておきましょう。次の見直しの時に、検討の出発点になります!

記入表を埋める時のコツ

『差分の列に何を書けばいいのか迷う』という方は、「何が変わるか」を一言で書くことから始めてみてください。うまく書けない行は、To-Beがまだ決まっていない行なんです。

記入表を見直す時のチェック
  • As-Isの列に、規程ではなく実際の流れが書かれている
  • To-Beの列に、目指す姿の理由がたどれる
  • 差分の列が「何が変わるか」の一言になっている
  • 対応の種類が4つのどれかに決まっている
  • 要件の列が、誰が読んでも同じ意味に取れる文になっている

業務要件を「誰が・いつ・何を・どの基準で」の形で書く方法は、業務要件定義とはで紹介しています。

影響調査も要件定義で行う

差分が出そろったら、次は影響調査です。ある業務を変えると、その前後の業務や、つながっているシステムにも変化が及ぶことがあります。

影響調査とは、変更によって影響を受ける業務、部署、データ、システムを洗い出す作業です。要件定義の段階で調べておくと、設計やテストの途中で「そこにも影響があったのか」と慌てずに済みますよ。

調べる先確かめること(物品購入の例)
前後の業務発注した物品の受け取りや支払いの業務に、手順の変化がないか
他の部署経理や総務が使っている資料の様式が変わらないか
データ発注の記録の項目が増えた時、集計表や報告書に影響しないか
つながっているシステム会計や在庫の仕組みに渡しているデータが変わらないか
社内の決まり承認の段数を変えることが、社内規程と合っているか
影響調査で漏れやすいところ
  • 月末や年度末にだけ行う作業
  • 他の部署が受け取っている帳票や集計
  • 担当者が個人で作っている表計算ソフトの集計
  • 外部の取引先に渡している書類の様式

影響調査の記入例

影響調査の結果も、表にしておくと関係者と共有しやすくなります。差分の行ごとに、影響を受ける先と、その対応を書いていきます。

差分(例)影響を受ける先影響の中身対応(例)
承認の段数を減らす経理月末の支出の確認で、部長の承認を前提にしている経理と確認の手順を話し合う
記録を一か所にまとめる各部署の集計表担当が個人で作った集計が使えなくなる必要な集計を洗い出して一覧にする
紙の控えをやめる社内の監査監査で紙の控えを見ている記録の見せ方を監査の担当と決める

影響を受ける先の担当者には、要件定義の段階で一度話をしておくと安心です。後から「聞いていない」と言われるのを防げますよ!

特に、担当者が個人で作っている集計は、業務フロー図に描かれていないことが多いんです。ヒアリングの最後に「この記録を、ほかに使っている人はいますか」と一言聞いておきましょう。

システムを入れ替える場合の影響調査や移行の考え方は、システム移行・リプレースの要件定義で詳しく紹介しています。

業務改善の要件定義でつまずきやすいところ

業務改善を目的にした要件定義では、As-Is/To-Be分析でつまずくポイントがいくつかあります。よくあるものを先に知っておくと、避けやすくなります。

うまく進む進め方
  • 変えたい理由を最初に関係者でそろえる
  • As-Isはありのままの流れを描く
  • 差分ごとに対応の種類を決める
  • 影響を受ける部署にも早めに話をする
つまずきやすい進め方
  • 理由があいまいなまま図を描き始める
  • 規程どおりの流れだけをAs-Isとして描く
  • 差分をすべてシステムで解決しようとする
  • 決まった後で関係部署に知らせる

As-Isに時間をかけすぎる

『今の業務を全部描き切らないと、To-Beに進めない』と考えてしまう方もいます。気持ちはわかりますが、As-Isの図を細かく描くことに時間を使いすぎると、肝心のTo-Beを考える時間がなくなってしまいます。

As-Isは、困りごとと、その原因が見える細かさで十分です。変えない部分は、ざっくりと描くだけにしておきましょう。

To-Beが理想だけになる

逆に、To-Beを理想だけで描いてしまうこともあります。予算や期間、今の人員で回せるかを考えないと、描いた姿が絵に描いた餅になってしまいます。

関係者の意見が割れた時

To-Beを描いていると、部署によって目指す姿が違うことがあります。こうした場面では、どちらが正しいかを決めるより、目的に立ち返るのが近道です。

利用部門「承認を減らすと、むだな買い物が増えるのが心配です」
開発側「では、金額ごとの申請の件数を見てから、課長だけで承認する金額を決めるのはどうでしょう」

このように、心配の中身を聞いて、判断の材料を用意すると話がまとまりやすくなります。決まらない点は、決める人と期限を書いて課題一覧に残しておきましょう。

よくある失敗

To-Beを開発側だけで描き、業務部門には完成した図を見せるだけにしてしまうことです。現場で回らない流れになりやすく、稼働してから元のやり方に戻ってしまうこともあります。

To-Beは、業務部門の責任者と担当者が一緒に描くのが基本です。要件定義全体での進め方は、要件定義の進め方も参考にしてみてください。

要件定義ガイド

まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例

章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。

無料要件定義書のテンプレートを見る

当サイトの記事ページに移動します。

よくある相談に答えます

As-Is/To-Be分析や業務分析について、よく寄せられる相談を要約してお答えします。

やったことのない業務の要件定義は、どう進める?

「自分が経験したことのない業務を要件定義する時は、どうすればよいのか」という相談があります。結論から言うと、まずAs-Isを教えてもらうところから始めるのが近道です。

業務の担当者に、今の流れを一つずつ話してもらい、その場で業務フロー図に描いて見せてみてください。「そこは違う」と直してもらううちに、業務の目的や困りごとも自然と見えてきます。

要件が技術的に難しすぎるとわかったら?

「要件定義の途中で、ある要件が技術的に難しすぎるとわかった時はどうすればよいか」という相談もあります。As-Is/To-Beの記入表に戻って、その要件の元になった差分を見直してみてください。

差分の対応を「システム化」から「ルール変更」に変えるだけで、目的を果たせることもあります。目的は守りつつ、手段を変えられないかを業務部門と話し合いましょう。

オリジナルのシステムの見積もりは、何をもとに作る?

「完全にオリジナルのシステムを作る時、見積もりは何をもとに作ればよいのか」という相談も見かけます。見積もりの土台になるのは、要件定義で決めた作るものの一覧です。

As-Is/To-Beの記入表で「システム化」とした差分が、作るものの候補になります。差分の行数や中身がはっきりしていれば、見積もりの前提も説明しやすくなりますよ。

逆に、To-Beが決まっていない段階で出した見積もりは、前提が揺れやすくなります。見積もりを頼む時は、記入表と一緒に「まだ決まっていないこと」の一覧も渡しておくと、見積もる側も前提を書き添えやすくなります。

よくある質問

As-Is/To-Be分析とは何ですか?

今の業務(As-Is)と目指す業務(To-Be)を比べて、その差分から必要な対応を洗い出す方法です。要件定義では、差分が決めることの一覧になります。

As-IsとTo-Beはどちらから描きますか?

一般的にはAs-Isから描きます。今の流れと困りごとを知ってからTo-Beを描くと、目指す姿が現場に合ったものになりやすいからです。

差分はすべてシステムで解決するのですか?

いいえ、システム化のほかに、ルール変更、教育や周知、作業をやめる、といった対応があります。差分ごとに対応の種類を決めておきましょう。

影響調査は要件定義のどの段階で行いますか?

差分が出そろった後に行うのが目安です。変更によって影響を受ける業務、部署、データ、システムを洗い出しておくと、後の手戻りを減らせます。

As-Is/To-Be分析の結果はどこに書きますか?

業務要件定義書の「今の業務と課題」「目指す業務」の章に書くことが多いです。記入表は別紙にして、本文から参照する形でも構いません。

まとめ

この記事の要点
  • As-Is/To-Be分析は、今と目指す姿の差分から必要な対応を洗い出す方法
  • As-Isはありのままの流れを描き、To-Beは変えたい理由から描く
  • 差分は記入表に1行ずつ書き、対応の種類と要件の書き方まで埋める
  • 対応はシステム化、ルール変更、教育や周知、やめるの4つに分ける
  • 差分が出そろったら、前後の業務や他のシステムへの影響を調べる
要件定義ガイド

要件定義ガイド 編集部

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