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『要件定義で業務フロー図を描いてと言われたけど、どこまで細かく描けばいいのかわからない』と悩んでいる方も多いはずです。
結論から言うと、要件定義の業務フロー図は、部署ごとのレーンに分けたスイムレーン図で描き、描いた図から要件を拾い出すところまでがセットです。この記事では、スイムレーン図を描く手順と、図から要件を拾うチェックを記入例つきでお伝えします。
要件定義で業務フロー図を描くのはなぜ?
業務フロー図は、誰がどの順番で何をするかを1枚の図で見せるための道具です。文章だけでは伝わりにくい作業のつながりや、部署の間の受け渡しを、発注側と開発側が同じ絵を見ながら確かめられます。
要件定義の打ち合わせで、文章の資料だけを読み合わせると、話がかみ合わないことがありますよね。業務フロー図を広げると、「その前に、この確認があります」と現場の方が指で示してくれるんです。
要件定義全体の流れは要件定義とはで紹介しています。ここでは、要件定義のフローの中で業務フロー図をどう描き、どう使うかに絞ってお話しします。
業務フロー図とフローチャートの違い
似た言葉にフローチャートがあります。要件定義のフローチャートと業務フロー図は、同じものとして扱われることもありますが、目的が少し違います。
| 比べる点 | 業務フロー図 | フローチャート |
|---|---|---|
| 主に描くもの | 人や部署の仕事の流れ | 処理の手順や判断の分かれ道 |
| レーン | 部署や役割ごとにレーンを分ける | レーンを分けないことが多い |
| 主に使う場面 | 要件定義で業務の流れを合意する | プログラムや作業手順の説明 |
| 読む人 | 業務部門と開発側の両方 | 主に作業する人や開発側 |
要件定義で描くのは、レーンを分けた業務フロー図が基本です。処理の細かい分かれ道は、必要になった時にフローチャートで補うと考えておきましょう。
要件定義のどの場面で使う?
業務フロー図は、要件定義の中で何度も出番があります。今の業務を描く時、目指す業務を描く時、そして要件を拾い出す時です。
| 場面 | 描く図 | 目的 |
|---|---|---|
| 今の業務を知る | 今の業務フロー図(As-Is) | 現場の流れと困りごとを共有する |
| 新しい業務を決める | 目指す業務フロー図(To-Be) | 何を変えるかを合意する |
| 要件を書く | 目指す業務フロー図 | 作業ごとに業務要件とシステムの出番を拾う |
今の業務と目指す業務の比べ方は、要件定義の業務分析(As-Is/To-Be)で詳しく紹介しています。
業務フロー図の基本ルールと記号
『記号の種類が多くて、どれを使えばいいのか迷う』という方もいますよね。実は、要件定義の業務フロー図で使う記号は、ほんの数種類で足ります。
| 描くもの | よく使う形 | 使い方のポイント |
|---|---|---|
| 開始と終了 | 角の丸い四角 | 流れの最初と最後に1つずつ置く |
| 作業 | 四角 | 「申込書を受け付ける」のように動詞で書く |
| 判断 | ひし形 | 「在庫はあるか」のように問いの形で書き、出口に条件を添える |
| 書類やデータ | 下が波形の四角 | 作業で作るもの、受け取るものを書く |
| システム | 円柱や専用の枠 | システムに登録する、システムから受け取るものを書く |
| 流れ | 線と矢印の線 | 作業の順番をつなぐ |
形の決まりは会社によって違います。社内に描き方の決まりがあれば、それに合わせてください。
記号を正しく使うことより、「誰が」「何をして」「何を次に渡すか」が読み取れることのほうがずっと大切です。迷った時は、四角とひし形だけで描き始めてみてください。
描く時の基本ルール
基本ルールを先に決めておくと、複数の人で描いても図の見た目がそろいます。
- 流れは左から右、または上から下の一方向にそろえる
- 作業の名前は「何を」と「どうする」で書く
- 1枚に載せる作業の数は、読める量にとどめる
- 開始と終了をはっきりさせ、途中で切れた線を残さない
- レーンの名前は、部署名か役割名のどちらかにそろえる
よくある描き間違いと直し方
初めて描いた業務フロー図には、よく似た描き間違いが出てきます。先に知っておくと、レビューで指摘される前に自分で直せますよ。
| 描き間違い | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 作業の名前が「受付」「確認」だけ | 何を受け付け、何を確かめるのかが伝わらない | 「修理の依頼を受け付ける」のように目的語を入れる |
| 判断の出口に条件が書かれていない | どちらに進むのかが読み手によって変わる | 出口の線に「はい」「いいえ」や条件を書く |
| 1つの作業が2つのレーンにまたがる | 誰の仕事なのかがあいまいになる | どちらか1つのレーンに置き、もう一方には受け取る作業を描く |
| システムの画面の操作まで描いている | 業務の流れが細かい操作に埋もれる | 業務の作業の単位でまとめ、操作は別の資料にする |
中でも多いのが、判断の出口の書き忘れです。ひし形を描いたら、出口の線に条件を書くところまでを1セットにしておきましょう!
1枚に収まらない時は分ける
業務が大きいと、1枚の図に全部を載せようとして文字が読めなくなることがあります。そんな時は、全体の流れを描いた1枚と、作業ごとの詳しい図に分けてみてください。
| 図の種類 | 描くこと | 主に見る人 |
|---|---|---|
| 全体の図 | 業務の大きな区切りと、部署の間の受け渡し | 業務部門の責任者、開発側の責任者 |
| 詳しい図 | 区切りの中の作業と判断、例外 | 業務部門の担当者、開発側のSE |
全体の図の四角に番号を振り、詳しい図の題名にも同じ番号をつけておくと、行き来しやすくなりますよ。
スイムレーン図を書く手順
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。スイムレーン図は、レーンを先に引いてから作業を並べると、迷わず描けるんです。
スイムレーンとは、プールのコースのように、部署や人ごとに横(または縦)の帯を分けた図のことです。帯の中に、その部署がする作業を置いていきます。
- 対象の業務の始まりと終わりを決める
- 登場する部署や役割を洗い出し、レーンを引く
- 始まりの作業を、担当のレーンに置く
- 次の作業を順に並べ、線でつなぐ
- 判断の分かれ道と、それぞれの行き先を描く
- 受け渡す書類やデータを、線の近くに書き足す
- 例外の時の流れを、いつもの流れとは別に足す
- 現場の担当者に見てもらい、違うところを直す

1. 始まりと終わりを決める
最初に決めたいのは、どこからどこまでを描くかです。範囲が決まっていないと、図がどんどん横に伸びてしまいます。
例えば、お客様から製品の修理を受け付ける業務なら、「修理の依頼を受けた時」から「修理した製品を返して記録を閉じた時」までと決めます。範囲の外になる作業は、図の端に「請求の業務へ」のように書いておけば十分です。
2. レーンを引く
次に、その業務に関わる部署や役割を並べて、レーンを引きます。お客様のように社外の人も、関わるならレーンを作っておきましょう。
システムを1本のレーンにする描き方もあります。今の業務を描く時は、表計算ソフトや紙の台帳もレーンや書類として描いておくと、後で置き換える対象が見えやすくなります。
3〜6. 作業を並べて、判断と受け渡しを描く
作業は、担当する部署のレーンに置いていきます。レーンをまたぐ線が出てきたら、そこが部署の間の受け渡しです。
受け渡しの線には、何を渡すのかを書き添えてください。「修理の依頼票」「見積もり」のように書いておくと、後で業務で扱うデータを洗い出す時に役立ちます。
7. 例外の流れを足す
いつもの流れが描けたら、例外の流れを足します。ここを省くと、要件定義の後半や設計の途中で「この場合はどうするの?」という質問が次々に出てきてしまいます。
開発側「修理の見積もりを、お客様が断った時はどうなりますか」
利用部門「製品をそのまま返します。その時は、点検の費用だけいただくこともありますね」
この会話から、「見積もりを断られた時の返却」と「点検の費用をもらうかどうかの判断」という2つの流れが図に加わります。
8. 現場の人に見てもらう
描いた図は、現場の担当者に見てもらって初めて使えるものになります。机の上で描いた図は、どこかで現場の流れとずれていることが多いんです。
見てもらう時は、「この図で違うところはありますか」より「この線の先で、本当にこの人が受け取っていますか」のように、具体的な場所を指して聞くと答えてもらいやすいですよ。
記入例:修理受付の業務フロー
架空の題材として、家電製品の修理を受け付ける業務の、目指す業務フローを描く場合の例を作ってみました。図そのものは載せられないので、スイムレーン図に置く中身を表にしています。
| 順番(例) | レーン | 作業 | 次に渡すもの |
|---|---|---|---|
| 1 | お客様 | 修理を依頼する | 製品と症状の説明 |
| 2 | 受付窓口 | 依頼を受け付け、受付番号を伝える | 修理の依頼票 |
| 3 | 修理担当 | 製品を点検し、直せるかを判断する | 点検の結果 |
| 4 | 受付窓口 | 見積もりを作り、お客様に連絡する | 見積もり |
| 5 | お客様 | 修理するかどうかを答える | 修理するかの回答 |
| 6 | 修理担当 | 修理して動作を確かめる | 修理の記録 |
| 7 | 受付窓口 | 製品を返し、記録を閉じる | 返却の記録 |
判断の分かれ道は、3番の「直せるか」と5番の「修理するか」の2か所です。それぞれの「いいえ」の行き先も描いておきましょう。
| 分かれ道(例) | 「はい」の行き先 | 「いいえ」の行き先 |
|---|---|---|
| 直せるか | 4番の見積もりへ | 受付窓口が直せない理由を伝え、製品を返す |
| 修理するか | 6番の修理へ | 受付窓口が製品を返し、点検の費用の扱いを決める |

今の業務フローと並べてみる
目指す業務フローが描けたら、今の業務フローと並べてみましょう。変わる場所に印をつけると、関係者に「どこが変わるのか」を一言で説明できます。
| 作業(例) | 今の業務 | 目指す業務 | 変わること |
|---|---|---|---|
| 依頼の受け付け | 電話で聞き取り、紙の依頼票に手書きする | 受付窓口が依頼を登録し、受付番号を伝える | 依頼票を書き写す手間がなくなる |
| 修理担当への連絡 | 依頼票を修理担当の机まで持っていく | 登録した依頼を修理担当が一覧で見る | 渡し忘れが起きにくくなる |
| お客様への連絡 | 修理担当に進み具合を聞いてから折り返す | 受付窓口が進み具合を見て答える | 問い合わせにその場で答えられる |
この表は、As-Is/To-Beの分析でつくる差分の表とほとんど同じ形です。業務フロー図と差分の表を行き来しながら、変える場所を決めていくと進めやすいですよ!
細かさはどこまで?
『作業を1つずつ全部描いていたら、図が終わらない』と感じますよね。要件定義の業務フロー図は、「誰かに仕事が渡る場面」と「判断が入る場面」がわかる細かさで十分です。
1人で続けて行う細かい手順は、1つの作業にまとめて構いません。必要なら、その作業だけ別の図や手順書で補いましょう。
要件定義ガイド
まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例
章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。
無料要件定義書のテンプレートを見る当サイトの記事ページに移動します。
図から要件を拾い出すチェック
業務フロー図は、描いて終わりではありません。むしろ、ここからが要件定義の本番なんです。
図の中の作業、判断、受け渡しを一つずつ見ていくと、業務要件とシステムの出番が拾えます。拾った内容は、業務要件定義書に書き写していきます。

| 図の部分 | 拾える要件の例(修理受付・例) | どこに書くか |
|---|---|---|
| 作業の四角 | 受付窓口は依頼を受けた日のうちに受付番号を伝える | 業務ルール |
| 判断のひし形 | 直せるかの判断の基準と、判断する人 | 業務ルール |
| レーンをまたぐ線 | 修理担当に渡す依頼票に書く項目 | 業務で扱う書類とデータ |
| 書類やデータ | 依頼票、見積もり、修理の記録の項目と保管 | 業務で扱う書類とデータ |
| システムに触れる作業 | 受付番号を発行して、進み具合を確かめられる | システム要件の候補 |
| 例外の流れ | 見積もりを断られた時の返却と費用の扱い | 業務ルール |
- 作業の四角ごとに、担当と期限が決まっている
- 判断のひし形ごとに、判断の基準と判断する人が決まっている
- レーンをまたぐ線ごとに、渡すものの中身が決まっている
- 図に出てくる書類やデータが、すべて一覧に載っている
- 例外の流れにも、担当と次の行き先がある
- 行き先のない線や、どこからも来ない作業が残っていない
拾い出した要件をまとめる文書の書き方は、業務要件定義書の書き方で章立てと合わせて紹介しています。
システムの出番は「受け渡し」に多い
要件を拾っていくと、システムの出番はレーンをまたぐ受け渡しに集まりやすいことに気づきます。手で書き写したり、電話で伝えたりしている場面です。
例えば、受付窓口が依頼票を手書きして修理担当に渡しているなら、そこが登録と共有の機能を考える候補になります。逆に、1人で完結する作業は、システムにしなくてもよい場合もあります。
拾った要件を一覧にする
図から拾った要件は、図の番号と結びつけて一覧にしておきます。後で「この要件はどこから来たのか」をたどれるようにするためです。
| 番号(例) | 図の場所 | 要件(例) | 区分 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2番の作業 | 受付窓口は依頼を受けた日のうちに受付番号を伝える | 業務要件 |
| 2 | 3番の判断 | 直せるかは修理担当が点検の結果をもとに判断する | 業務要件 |
| 3 | 2番から3番への線 | 依頼票には症状、購入時期、連絡先を書く | 業務で扱うデータ |
| 4 | 4番の作業 | 受付番号から進み具合を確かめられる | システム要件の候補 |
ISO/IEC/IEEE 29148でも、良い要件の性質の一つに「追跡できる」が挙げられています。図の番号と要件を結んでおくのは、まさにこのためなんです。
今の業務フロー図だけを描いて、目指す業務フロー図を描かずに要件を拾ってしまうことです。今の流れのままシステムに置き換えると、困りごとまでそのまま新しいシステムに引き継いでしまいます。
業務フロー図をどの工程で作り、ほかにどんな資料をそろえるかは、要件定義の成果物一覧や要件定義の進め方も参考にしてみてください。
よくある相談に答えます
要件定義の業務フローについて、よく寄せられる相談を要約してお答えします。
ヒアリングから要件定義、設計へと進む流れがつかめない
「ヒアリング、論点の整理、要件定義、設計、開発と進むと聞いたが、実際の流れがよくわからない」という相談があります。結論から言うと、業務フロー図はヒアリングと要件定義をつなぐ役を担っています。
ヒアリングで聞いた話をその場で業務フロー図に描き、図を見ながら論点を出し、決まったことを要件として書く。この順番で進めると、聞いた話が要件の形に変わっていく様子がつかみやすくなりますよ。
画面の表示項目を、実際の運用に合ったものにしたい
「要件定義の段階で、画面に出す項目や表示の形を実際の運用に合ったものにするにはどうすればよいか」という相談もあります。業務フロー図のレーンをまたぐ受け渡しに注目してみてください。
受け渡しの時に、受け取った人が何を見て次の作業をしているかを聞くと、画面に必要な項目が見えてきます。図に「依頼票」と書いた所で、依頼票のどの欄を見て判断しているかまで聞いておくと安心です。
プログラミングが苦手でも、業務フロー図を描く仕事はできる?
「プログラミングが苦手だが、社内SEとしてやっていけるか」という相談も見かけます。業務フロー図を描く力は、プログラミングとは別の力です。
現場の話を聞いて、誰が何をしているかを図にする力は、要件定義でとても重宝されます。まずは身近な業務を1つ選んで、スイムレーン図を描く練習から始めてみてください。
よくある質問
要件定義の業務フロー図はどんなツールで描けばよいですか?
作図ツールや表計算ソフト、手書きのホワイトボードでも構いません。関係者が見られて、直しやすい形を選ぶのがおすすめです。
業務フロー図とフローチャートは使い分けが必要ですか?
要件定義では、部署ごとのレーンに分けた業務フロー図を基本にします。処理の細かい分かれ道を説明したい時だけ、フローチャートで補うとわかりやすくなります。
今の業務フロー図と目指す業務フロー図は両方必要ですか?
業務を変える要件定義なら、両方あると何が変わるのかが伝わりやすくなります。小さな見直しなら、目指す業務の図に変わる部分の印をつける形でも十分です。
業務フロー図は誰が描くものですか?
開発側のSEや社内SEが描くことが多いですが、中身を決めるのは業務部門です。描いた人に関係なく、業務部門の担当者に見てもらって直す流れを作っておきましょう。
業務フロー図はどのくらい細かく描けばよいですか?
部署の間で仕事が渡る場面と、判断が入る場面がわかる細かさが目安です。1人で続ける細かい手順は、1つの作業にまとめて構いません。
まとめ
- 要件定義の業務フロー図は、部署ごとのレーンに分けたスイムレーン図で描く
- 範囲を決め、レーンを引き、作業と判断と受け渡しを並べ、最後に例外を足す
- 描いた図は現場の担当者に見てもらい、具体的な場所を指して確かめる
- 作業、判断、受け渡し、例外のそれぞれから要件を拾い出す
- システムの出番は、レーンをまたぐ受け渡しに集まりやすい





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