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「要件定義をやってみたいけど、未経験の自分に務まるのかな」と不安になっていませんか。
結論から言うと、要件定義は未経験からでも、小さな成果物を一つずつ書いて慣れていけば身につけられます。
この記事では、議事録から始めて業務フロー図まで進む3か月の練習メニューと、職場で経験を積むコツを紹介します。
要件定義は未経験からでも身につく?
要件定義は、特別な才能より「聞く・書く・確かめる」の積み重ねで身につく仕事です。
いきなり全部を任されることは少ないので、小さな部分から慣れていけば大丈夫です。
要件定義(RD:Requirements Definition)は、システムで何を実現するかを関係者で決める工程です。
『上流の仕事だから、経験を積んだベテランしかできないのでは』と感じる方も多いはずです。
たしかに、要件定義全体をまとめるには経験が要ります。
ただ、要件定義の中には、未経験の人でも担当できる作業がたくさんあるんです。
要件定義の中で、未経験でも始めやすい作業
要件定義の作業を細かく分けると、次のようになります。
| 作業 | 未経験からの始めやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| 議事録を書く | 始めやすい | 打ち合わせで聞いたことを、決まったことと宿題に分けて書けばよい |
| 要件の一覧を整理する | 始めやすい | 出てきた要望に番号を振り、表に並べる作業から入れる |
| 業務フロー図を書く | 少し練習が要る | 部署ごとのレーンに分けて、作業の順番を図にする |
| 小さな機能の要件を書く | 少し練習が要る | 入力・処理・出力を、確かめられる言葉で書く |
| 非機能要件を決める | 経験が要る | 性能や運用の水準を、発注側と相談して決める |
| 全体の合意をまとめる | 経験が要る | 関係者の意見の食い違いを調整し、承認を取る |
上の二つから始めて、下へ少しずつ広げていくイメージです。
要件定義そのものの意味から確かめたい方は、要件定義とはもあわせてどうぞ。
要件定義に役立つ力は、ほかの仕事でも育つ
要件定義で役に立つ力は、次のようなものです。
- 相手の話を最後まで聞き、要点を確かめる力
- 業務の流れや決まりごとを理解する力
- 誰が読んでも同じ意味になる文章を書く力
- 話の流れを図にする力
- 意見が分かれた時に、合意を取る調整力
- ITの基礎知識
実は、この中でITの知識が必要なのは最後の一つだけなんです。
営業や事務、接客の仕事で身につけた「聞く力」や「調整する力」は、そのまま要件定義で生きますよ。
練習の前に、最初に覚えたい言葉と流れ
要件定義の打ち合わせで迷子にならないために、よく出てくる言葉だけ先に押さえておきましょう。
全部を暗記しなくても、「どれとどれが対になっているか」が分かれば十分です。
打ち合わせに初めて出ると、知らない言葉が次々に出てきて戸惑いますよね。
『みんな当たり前のように話しているけど、聞き返していいのかな』と不安になる方もいるはずです。
まずは、よく出てくる言葉を対にして覚えておくと、話の流れがつかみやすくなります。
| 言葉 | 意味 | 対になる言葉 |
|---|---|---|
| 要求 | 利用者や発注者の「こうしたい」という希望 | 要件(予算・期間・技術を踏まえて、実現すると合意したこと) |
| 業務要件 | 業務をどう変えるか(誰が・いつ・何を・どの基準で) | システム要件(そのためにシステムが持つべき機能や性能) |
| 機能要件 | システムが何をするか(画面・帳票・データ・処理・連携) | 非機能要件(どのくらいの品質で動くか) |
| As-Is | 今の業務 | To-Be(目指す業務) |
| 要件定義 | 何を作るかを決める工程 | 基本設計(利用者から見える部分をどう作るかを決める工程) |
要件定義は、最後に受入テストで確かめられる
工程の流れでは、V字モデルという見方もよく出てきます。
左側に要件定義や設計などの上流の工程、右側にテストの工程を置き、それぞれを対応させて考える見方です。
要件定義で決めた内容は、最後に発注側が行う受入テストで確かめられます。
つまり、要件定義で書いた一文一文が、そのままテストの物差しになるんです。
この関係が分かると、「確かめられる言葉で書く」ことの意味が腹落ちしますよ。
工程の分け方や呼び方は、会社によって少しずつ違います。
IPAの「共通フレーム2013」は、こうした用語と作業の区切りをそろえるための共通の物差しとして知られています。
未経験から慣れる3か月の練習メニュー
いきなり要件定義書を書こうとせず、議事録、要件一覧、業務フロー図の順に、小さな成果物で練習します。
1か月に一つずつ、書いて見てもらうことを繰り返してみてください。
ここからは、未経験の人が要件定義に慣れるための練習メニューを紹介します。
身につける順番は、議事録を書く、要件一覧を整理する、業務フローを書く、小さな機能の要件を書いてレビューを受ける、という流れがおすすめです。
『3か月で要件定義ができるようになるの?』と思いますよね。
3か月で全部ができるようになるわけではありません。
ただ、要件定義の打ち合わせに入った時に、何が起きているかが分かり、手伝える状態にはなれます。
3か月の練習メニュー(例)
| 時期 | 練習する成果物 | やること | できるようになること |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 議事録 | 打ち合わせのたびに、決まったこと・決まっていないこと・宿題を分けて書く | 話の要点をつかみ、決まったことを残せる |
| 2か月目 | 要件一覧 | 議事録から要望を拾い、番号を振って一覧にする | 要望を一つずつに分け、重なりや抜けに気づける |
| 3か月目 | 業務フロー図と小さな要件 | 一つの業務の流れを図にし、一つの機能の要件を書いてレビューを受ける | 業務の流れと要件をつなげて説明できる |
期間はあくまで目安なので、自分のペースで進めて大丈夫です。

1か月目:議事録で「決まったこと」を残す練習
最初の1か月は、議事録を書く練習です。
議事録は、要件定義の成果物の中でもいちばん身近で、すぐに始められます。
コツは、話した順に書くのではなく、「決まったこと」「決まっていないこと」「宿題」に分けて書くことです。
題材は「部署内で、取引先の名刺の情報を共有する仕組みを作る」打ち合わせです。
決まったこと:名刺の情報は、受け取った人がその週のうちに登録する。
決まっていないこと:退職した取引先担当者の情報を、いつ消すか。
宿題:情報を見られる範囲を、部長が来週の会議までに決める。
書いたら、打ち合わせに出ていた先輩に見てもらいましょう。
「この宿題、期限が抜けているね」のような指摘をもらえると、ぐっと上達しますよ。
打ち合わせ中は、全部を書き取ろうとしなくて大丈夫です。
「今のは決まったことですか、それとも次回までの検討ですか」と確かめるだけで、議事録の質はぐっと上がります。
「退職した方の名刺は、すぐ消してしまっていいんでしょうか」
「そこは部長に確認したいので、次回までの宿題にしましょう」
こういう一言を拾えるようになると、議事録を書く力がついてきた証拠です。
2か月目:要件一覧で「要望を分ける」練習
2か月目は、議事録から要望を拾って一覧にする練習です。
要望は、一つの文に二つ以上のことが混ざっていることがよくあります。
例えば「名刺を登録して、部署のみんなで検索できるようにしたい」は、登録と検索の二つに分けます。
| 番号 | 要件(例) | 出てきた打ち合わせ | 状態 |
|---|---|---|---|
| R-01 | 受け取った名刺の情報を登録できる | 第1回 | 合意済み |
| R-02 | 会社名や氏名の一部で名刺を検索できる | 第1回 | 合意済み |
| R-03 | 退職した担当者の情報を一覧から外せる | 第2回 | 検討中 |
| R-04 | 部署ごとに見られる名刺を分ける | 第2回 | 部長が判断 |
番号と状態の列があるだけで、「どれが決まっていて、どれが残っているか」が一目で分かります。
3か月目:業務フロー図と、小さな要件を書く練習
3か月目は、一つの業務の流れを図にしてみましょう。
業務フロー図は、登場する部署や人を横のレーンに分け、作業の順番を矢印でつなぐ図です。
名刺の例なら、「名刺を受け取る」「登録する」「部署で検索する」「古い情報を整理する」のような流れになります。
図が書けたら、その中の一つの機能について、要件を書いてみます。
- 誰が使う機能かを書く
- 入力する情報を書く
- システムが行う処理を書く
- 結果として出てくるものを書く
- うまくいかない時(入力の漏れなど)の動きを書く
- 先輩にレビューしてもらい、指摘を直す
名刺の検索機能を例に、手順どおりに書くと次のようになります。
| 項目 | 記入例(架空) |
|---|---|
| 使う人 | 部署のメンバー |
| 入力 | 会社名、または氏名の一部 |
| 処理 | 登録されている名刺の中から、入力した文字を含むものを探す |
| 出力 | 該当する名刺の会社名、氏名、部署、連絡先を一覧で表示する |
| うまくいかない時 | 該当する名刺が無い時は、「見つかりませんでした」と表示する |
ここまで書けたら、もう立派な要件の下書きです。
業務フロー図の詳しい描き方は、要件定義の業務フロー図の書き方で紹介しています。
職場で要件定義の経験を積むには?
要件定義の経験は、「やらせてください」と言うより、「この作業を手伝えます」と具体的に申し出るほうが積みやすいです。
議事録や一覧づくりなど、すぐ役に立つ作業から手を挙げてみましょう。
練習の次は、実際の仕事で経験を積む段階です。
『今の職場では、下流の工程しか任せてもらえない』という方もいますよね。
そんな時でも、要件定義に近づく方法はあります。
頼み方の例
漠然と「上流をやりたい」と伝えるより、手伝える作業を具体的に言うほうが、相手も任せやすくなります。
| 漠然とした頼み方 | 具体的な頼み方(例) |
|---|---|
| 「要件定義をやってみたいです」 | 「次の打ち合わせで、議事録を書かせてもらえませんか」 |
| 「上流の経験を積みたいです」 | 「要望の一覧を表にまとめるのを手伝えます」 |
| 「設計も勉強したいです」 | 「今の要件定義書を読んで、分からない点を質問してもいいですか」 |
議事録は、先輩にとっても手間が減る作業なので、喜ばれることが多いです。
今の仕事の中で練習する
要件定義に入れなくても、今の仕事の中で練習できることがあります。
例えば、テストを担当しているなら、テストのもとになった要件を読み、「この書き方だと合否が判断しにくい」と感じた点をメモしておきます。
それだけでも、良い要件の書き方が少しずつ分かってきますよ。
- 担当している機能の要件定義書を読んでみる
- テストで迷った要件を、どう書けば迷わないか考える
- 問い合わせの内容を、業務の困りごととして書き出す
- 社内の小さな改善を、目的・範囲・要件の形で提案してみる
やったことは記録に残しておく
小さな作業でも、要件定義に関わった経験は記録に残しておきましょう。
「どんな業務の案件で」「何の成果物を」「どこまで担当したか」を書いておくと、次の案件で手を挙げる時の説明に使えます。
| 書いておくこと | 記入例(架空) |
|---|---|
| 案件の題材 | 部署内の名刺情報を共有する仕組みづくり |
| 担当した成果物 | 議事録、要件一覧 |
| 担当した範囲 | 打ち合わせ全5回の議事録と、要望の番号づけ |
| 学んだこと | 宿題には担当者と期限を書かないと、次回まで進まない |
こうした記録は、上司と面談する時にも「次はこれをやってみたい」と伝える材料になりますよ。
学びの目安としての資格
学ぶ範囲の目安として、IPAの情報処理技術者試験にはシステムアーキテクト試験やプロジェクトマネージャ試験があります。
ただ、資格は知識の整理には役立ちますが、要件定義は実際に書いて直す経験で伸びる仕事です。
資格の勉強と、議事録や要件一覧を書く練習を並行するのがおすすめです。

つまずきやすい点と、乗り越え方
未経験の人がつまずくのは、技術の知識より「何が分からないのかが分からない」状態です。
分からない言葉や点を、そのままにせず書き出すことから始めてみましょう。
最初のうちは、打ち合わせで飛び交う言葉が分からず、置いていかれることもありますよね。
それは誰もが通る道なので、焦らなくて大丈夫です。
| よくあるつまずき | 乗り越え方の例 |
|---|---|
| 業務用語が分からない | 自分用の用語集を作り、打ち合わせの後に先輩に確かめる |
| 要望をそのまま書いてしまう | 「なぜそうしたいのか」を一つ聞き返す癖をつける |
| あいまいな言葉で書いてしまう | 「早く」「使いやすく」を、確かめられる言葉に書き直す |
| 全部を決めようとして止まる | 決まらない点は課題として一覧に移し、担当と期限を書く |
| 工程の言葉が混ざる | 要件定義、基本設計、詳細設計で決めることを表にしておく |
あいまいな言葉を直す練習
要件を書く時に、つい使ってしまうのが「早く」「使いやすく」「きちんと」のような言葉です。
例えば「名刺をすぐに探せること」と書くと、「すぐ」が人によって違います。
「会社名の一部を入力すると、該当する名刺が一覧で表示されること」のように書き直すと、誰が読んでも同じ意味になります。
分からない点を質問できず、想像で要件を書いてしまうケースです。
未経験のうちは、質問することが仕事の一部だと考えて大丈夫です。
要件定義がなぜ難しいと言われるのかは、要件定義が難しい理由とつまずきポイントで詳しく紹介しています。
要件定義ガイド
まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例
章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。
無料要件定義書のテンプレートを見る当サイトの記事ページに移動します。
よくある相談に答えます
要件定義を未経験から目指す方の、よくある相談を要約してお答えします。
IT業界の求人を見て、要件定義、プログラム、テストなど仕事の中身は分かったが、未経験者にはきついのではないか、という相談です。
未経験から入る場合、最初から要件定義を一人で任されることは少ないです。
多くは、テストや資料作りなど、ほかの工程から入って少しずつ広げていきます。
辛いかどうかは職場によりますが、「最初は分からなくて当然」と思えると、気持ちがだいぶ楽になりますよ。
未経験からエンジニアになって数年たつが、下流の工程ばかりで上流の経験がない。どうすればいいか、という相談です。
まずは、今の現場で手伝える作業を具体的に申し出てみてください。
議事録や要件の一覧づくりなら、下流の工程を担当しながらでも引き受けやすいです。
それでも機会がない場合は、社内の小さな改善を要件定義の形で提案して、書いた経験を作っておくと次につながります。
下流の工程の経験は、要件定義で「実現できるか」「テストで確かめられるか」を判断する時に役立ちます。
遠回りに見えても、今の経験はむだになりませんよ。
サーバーやネットワークを作る時の要件定義書を、初めて書くことになったという相談です。
結論から言うと、まずは「何のための基盤か」と「どのくらいの品質が必要か」から書き始めてみましょう。
品質の目安には、IPAの「非機能要求グレード」が役立ちます。
可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つの大項目に沿って、必要な水準を発注側と決めていきます。
詳しくはインフラ・基盤の要件定義が参考になります。
よくある質問
要件定義は未経験でも任されることがありますか?
全体を一人で任されることは少ないですが、議事録や要件の一覧づくりなど一部の作業を任されることはあります。そこから少しずつ範囲を広げていくのが一般的です。
要件定義の勉強は、何から始めればいいですか?
議事録を書く練習から始めてみてください。決まったこと、決まっていないこと、宿題に分けて書くだけで、要件定義に必要な考え方が身についていきます。
プログラミングができないと要件定義はできませんか?
プログラミングができなくても、聞く力や書く力で活躍できます。ただ、実現できるかを判断する時にITの基礎知識は役立つので、少しずつ学んでおくと安心です。
練習用に要件定義書の様式はありますか?
社内の過去の要件定義書がいちばんの教材です。手元に無い場合は、要件定義書の例・テンプレートの章立てを使って練習してみてください。
独学で要件定義を練習する方法はありますか?
身近な業務や、よく使うサービスを題材に、目的、範囲、要件の一覧、業務の流れを書いてみる方法があります。書いたものを、経験のある人に見てもらえるとさらに伸びます。
まとめ
- 要件定義は、未経験からでも小さな作業から慣れていける
- 練習の順番は、議事録、要件一覧、業務フロー図、小さな要件の順
- 職場では、手伝える作業を具体的に申し出ると経験を積みやすい
- 分からない言葉や点は、書き出して確かめる習慣をつける
要件定義書の書き方をもう一歩深く知りたい方は、要件定義書の書き方で章ごとの記入例を見てみてください。





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