要件定義の費用はどう決まる?見積もりの読み方と増減の要因

要件定義の費用を表す、見積書を並べて比べる手元のアイキャッチ

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システムの開発を外に頼もうとして、『要件定義だけでも費用がかかるの?』『この見積もりは高いの、安いの?』と戸惑っていませんか。

結論から言うと、要件定義の費用は「関わる人数×期間」で見積もられることが多く、決まった相場の金額があるわけではありません。

この記事では、要件定義の費用が増える要因と減らせる要因、見積もりの内訳の読み方を、表で具体的に見ていきます。

目次

要件定義の費用はどう決まる?「人数×期間」で見積もられる

先に結論

要件定義の費用は、関わる人の数と、かかる期間から見積もられることが多いです。そのため、システムの規模や関わる部署の数、今のシステムの有無などで大きく変わります。

要件定義(RD:Requirements Definition)は、システムで何を実現するかを決めて、発注側と開発側で合意する工程です。

ここでは開発側の担当者が、話を聞き、業務の流れを描き、要件定義書にまとめる作業をします。

『まだ何も作っていないのに、費用がかかるの?』と思う方も多いですよね。

ただ、要件定義は人が時間をかけて行う仕事なので、作る工程と同じように費用がかかるのが一般的なんです。

要件定義そのものの意味は、要件定義とは?意味をわかりやすく解説で確かめられます。

見積もりの中身はどうなっている?

要件定義の見積もりは、おおまかに次のような要素から組み立てられます。

見積もりの要素中身見る時のポイント
体制どんな役割の人が、何人関わるか業務に詳しい人が入っているか
期間どのくらいの期間、作業するか会議の回数や確認の時間が見込まれているか
成果物何を作って渡してくれるか要件定義書のほかに何が含まれるか
前提条件見積もりの前提にしていること発注側が用意するものが書かれているか
含まれないもの見積もりの外になっている作業後から追加になりそうな作業がないか

この5つがそろっている見積もりなら、他の会社の見積もりとも比べやすくなります。

相場の金額を書かない理由

要件定義の費用について、公的な相場のデータは見当たりません。

金額は、案件の規模や条件、頼む会社の体制によって変わるからです。

補足

ネット上で見かける金額は、前提の条件がそろっていないことがほとんどです。金額だけを比べるより、この記事で紹介する「内訳」で比べるほうが、自分の案件に合った判断ができます。

要件定義の費用が増える要因・減らせる要因

ここが大事なところです

費用を左右するのは、主に「関わる人の数」と「決めるのにかかる時間」です。決めることが多い、決める人が多い、決めるための材料がない、の3つがそろうほど費用は増えやすくなります。

見積もりを見て『思ったより高い…』と感じた時は、どの要因が費用を押し上げているかを見てみましょう。

要因費用が増えやすい状態費用を減らしやすい状態
システムの規模対象の業務や機能が多い対象を絞り、段階的に進める
関わる部署の数多くの部署の意見を調整する決める人と窓口を一本にまとめる
今のシステムの有無今のシステムの中身を調べ直す必要がある今のシステムの資料がそろっている
非機能要件の厳しさ止まらないこと、速さなどの条件が厳しい業務への影響から必要な水準を選ぶ
外部とのつながり他のシステムや社外とのやり取りが多いつながる相手と内容が整理されている
発注側の準備目的や今の業務の流れがまとまっていない目的と業務の流れを先に書き出している
要件定義の費用が増える要因と減らせる要因を、左右に並べて比べた図解

表の上の4つは、案件そのものの性質なので、大きく変えるのは難しいこともあります。

一方で、下の2つは発注側の準備しだいで変えられる部分なんです。

今のシステムがある場合は、調べる作業が加わる

今のシステムを入れ替える場合、要件定義の前に「今のシステムが何をしているか」を調べる作業が加わります。

設計書が古い、作った人がいない、という状態だと、調べる時間がそのぶん増えますよね。

入れ替えの時に何を調べるかは、システム移行・リプレースの要件定義で詳しく扱っています。

非機能要件の厳しさも、費用に関わる

止まらないこと、速さ、守りの固さなどの非機能要件は、厳しくするほど決めることが増えます。

IPAの非機能要求グレードでは、可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つの大項目について、レベルを0〜5の段階で選びます。

『全部いちばん高いレベルにしておけば安心』と考えたくなりますよね。

ただ、高いレベルを選ぶほど、要件定義でも設計でも検討することが増えます。業務への影響から、項目ごとに必要な水準を選ぶのが、費用を抑えるコツなんです。

発注側の準備で減らせること

開発側が要件定義の時間の多くを使うのは、話を聞いて、まとめて、確かめる作業です。

発注側が先に材料をそろえておけば、そのぶん聞き取りの時間が短くなり、費用を抑えやすくなります。

発注前にそろえておくと費用を抑えやすいもの
  • 何に困っていて、どうなれば成功かを書いたメモ
  • 対象の業務と、対象にしない業務の線引き
  • 今の業務の流れを、簡単でよいので書き出したもの
  • 今使っている帳票や画面の写し
  • 決める人と、相談の窓口になる人の名前

『資料を作る時間なんてない…』という方もいるはずです。

その場合でも、上の一つ目と二つ目だけは書いておくのがおすすめです。何を決めるかの範囲がはっきりするだけで、見積もりの幅がぐっと狭まります。

見積もりの読み方:内訳の3点で比べる

先に結論

見積もりは合計の金額ではなく、「人数」「期間」「成果物」の3点の内訳で比べます。複数の会社から見積もりを取り、同じ物差しで並べるのが基本です。

要件定義の見積もりを複数の会社から取ると、合計の金額だけが目に入りがちですよね。

ただ、合計だけで比べると、「安いと思ったら成果物が少なかった」ということが起きます。

ここでは架空の題材として、「社内の文書の申請と承認を、紙からシステムに切り替える場合」に、2社の見積もりを並べてみます。

比べる点見積もりの記載(ア社・例)見積もりの記載(イ社・例)
体制業務の聞き取り担当と、まとめ役の二人まとめ役の一人
期間の考え方部署ごとに聞き取りの会議を見込む全体の会議だけを見込む
成果物要件定義書、業務フロー図、機能一覧、課題一覧要件定義書のみ
前提条件対象の部署と決める人を発注側が決める記載なし
含まれないもの非機能要件の詳細は基本設計で決める記載なし

合計の金額だけ見るとイ社のほうが抑えめだったとしても、成果物の量と前提条件がかなり違います。

イ社に頼む場合は、業務フロー図や課題一覧を誰が作るのか、前提条件は何かを質問してから判断するのがよさそうです。

見積もりを比べる時の手順

要件定義の見積もりを比べる手順(例)
  1. 目的と対象の範囲を書いたメモを、各社に同じ内容で渡す
  2. 見積もりの内訳として、体制、期間、成果物を出してもらう
  3. 前提条件と、含まれないものを書き出してもらう
  4. 各社の見積もりを、同じ表に並べて比べる
  5. 分からない点を質問し、答えも表に書き足す
要件定義の見積もりを、体制・期間・成果物・前提条件・含まれないものの内訳で比べる考え方の図解

同じメモを渡すのがポイントです。

会社ごとに伝える内容が違うと、見積もりの前提がずれて、比べられなくなってしまいます。

よくある失敗

「含まれないもの」を読まずに発注してしまう。後から「その作業は見積もりの外です」と言われ、追加の費用がかかることがあります。含まれないものが書かれていない見積もりは、質問して書いてもらいましょう。

見積もりの前に渡すメモの記入例

各社に渡すメモは、立派な資料でなくて大丈夫です。

文書の申請と承認の例なら、次のくらいの粒度で書いておけば、見積もりの前提がそろいます。

項目記入例(文書の申請と承認・例)
困っていること紙の申請書が承認者の机で止まり、どこにあるか分からなくなる
成功の姿申請がいまどこにあるかを、申請した人が画面で確かめられる
対象の範囲社内の稟議と、備品の購入の申請。経費の精算は対象外
関わる部署総務部門、経理部門、各部署の承認者
決める人と窓口決めるのは総務部門の責任者、窓口は総務部門の担当者
今あるもの紙の申請書の様式と、承認の順番を書いた社内の決まり
頼みたい成果物要件定義書、業務フロー図、課題一覧

『こんなに書かないといけないの?』と思うかもしれません。

ただ、表の多くは社内で一度は話している内容のはずです。分からない行は「未定」と書いて渡しても、見積もりの段階で質問してもらえます。

見積もりについて聞く時の会話例

内訳を聞く時は、こんなふうに聞いてみてください。

「この期間には、部署ごとの聞き取りの会議も入っていますか?」と発注側が聞きます。

「入っていません。全体の会議で決める前提なので、部署ごとに聞く場合は追加になります」と開発側が答えます。

このやり取りがあるだけで、後から費用が増える場面を一つ防げます。

要件定義だけ分けて頼む、という契約の形

ここが大事なところです

要件定義と、その後の設計・開発を分けて契約する例があります。要件定義の段階では作るものが決まっていないので、分けたほうが見積もりの根拠がはっきりしやすいからです。

受託の開発では、要件定義を「準委任契約」、設計以降を「請負契約」と分けて契約する例があります。

準委任契約は、決められた作業を行うことへの契約で、成果物の完成までを約束するものではありません。

請負契約は、決められたものを完成させて渡すことへの契約です。

要件定義を分けて契約する
  • 作るものが決まってから設計以降を見積もれる
  • 要件定義の結果を見て、頼む先を考え直せる
  • 要件定義にかかった時間を、そのまま費用に反映しやすい
最初からまとめて契約する
  • 作るものが決まる前に、全体を見積もることになる
  • 見積もりに、決まっていない部分の上乗せが入りやすい
  • 途中で範囲が変わった時に、話し合いが必要になる

どちらの形がよいかは、案件の規模や会社の方針で変わります。

契約の形を決める時は、社内の担当部署とも相談しながら進めてみてください。

契約の前に確かめておきたいこと

要件定義を分けて頼む場合も、まとめて頼む場合も、契約の前に確かめておくと安心なことがあります。

契約の前に確かめておきたいこと
  • 要件定義の成果物として、何を渡してもらえるか
  • 期間の途中で範囲が広がった時、どう話し合うか
  • 要件定義書の確認と承認を、誰がいつ行うか
  • 要件定義の結果を、他の会社への提案依頼に使ってよいか

特に最後の点は、要件定義の後に頼む先を考え直す可能性がある時に大事です。

「要件定義書を、設計以降の見積もりを取る時に他社へ見せてもいいですか?」と、発注側から先に聞いておきましょう。

要件定義ガイド

まずは型をそろえよう|要件定義書のテンプレートと記入例

章立て・各章に書くこと・1行の記入例をひとつの表にまとめました。白紙から書き始める前に、型を手元に置いておきましょう。

無料要件定義書のテンプレートを見る

当サイトの記事ページに移動します。

要件定義の進め方を知っておくと、見積もりが読みやすい

見積もりの期間に何が含まれているかは、要件定義の進め方を知っていると読みやすくなります。

聞き取り、業務の流れの整理、要件の一覧化、確認と承認、という一連の流れは、要件定義の進め方・手順で紹介しています。

要件定義の費用を削りすぎると何が起きる?

先に結論

要件定義の費用を削りすぎると、決めきれなかったことが設計や開発の段階に持ち越されます。そこで見つかった食い違いを直す手間のほうが、結果として大きくなりがちです。

『要件定義は早めに切り上げて、早く作り始めたい』と思うこともありますよね。

気持ちは自然ですが、要件定義を短くしすぎた時に起きやすいことも知っておきましょう。

削った時に起きやすいことその後に出てくる手間(例)
対象の範囲があいまいなまま進む開発の途中で「これも入っていると思っていた」が出る
業務の例外を聞ききれていないテストの段階で、例外の業務が動かないと分かる
決まっていないことが記録されていない誰が決めるのか分からず、作業が止まる
非機能要件を決めていない使い始めてから「遅い」「止まる」と言われる

後の工程で見つかった食い違いほど、直す範囲が広くなります。

要件定義の費用は、後の手戻りを防ぐための費用でもある、と考えておくと判断しやすくなります。

例えば文書の申請と承認の例で、承認者が不在の時の扱いを決めずに進んだとします。

「承認者が休みの日は、誰が代わりに承認するんですか?」とテストの段階で利用部門から聞かれます。

「その場合の流れは、要件にありませんでした」と開発側が答えることになり、画面も処理も作り直しになります。

この一つの質問を、要件定義の会議で先に出せていれば、作り直しは起きなかったはずですよね。

要件定義で例外の業務まで聞いておくことは、遠回りに見えて、全体の費用を抑える近道にもなるんです。

費用を抑えたい時の現実的な進め方

それでも予算に限りがある、という場合もありますよね。

そんな時は、要件定義の質を落とすのではなく、対象の範囲を絞るのがおすすめです。

費用を抑えたい時に検討したいこと
  • 最初に作る範囲を絞り、残りは次の段階に回す
  • 決める人を絞り、会議の回数を減らす
  • 今の業務の流れは、発注側で書き出しておく
  • 製品の標準の機能に業務を合わせられる部分を探す

業務システムを新しく入れる時の要件定義の進め方は、システム導入・構築の要件定義で解説しています。

よくある相談に答えます

よく寄せられる相談
  • 要件定義の費用は、システムを入れる側と作る側のどちらが持つのか
  • 発注側から要件定義の期間を長く取ってほしいと言われた
  • ホームページの作り直しでも、要件定義の費用はかかるのか

要件定義の費用は、どちらが持つもの?

システムを入れようとしている会社と、作る会社の間で、要件定義の費用をどちらが持つのか、という相談があります。

一般的には、要件定義も開発側の作業なので、発注側が費用を払う形が多いです。

ただ、提案の段階で行う簡単な聞き取りまで費用がかかるかどうかは、会社や取り決めによって違います。

『どこからが有料なのか分からない…』という時は、見積もりの段階で「どの作業から費用が発生するか」を確かめておきましょう。

要件定義の期間を長く取ってほしいと言われた

開発側の立場で、発注側から要件定義の期間を長めにしてほしいと頼まれ、予算との兼ね合いで悩む、という声もあります。

期間を長くすると、関わる人の作業時間も増えるので、費用も増えるのが一般的です。

まずは、なぜ長い期間が要るのかを聞いてみてください。

関係する部署が多い、業務がまだ固まっていない、などの理由が分かれば、期間を延ばす以外の手を一緒に考えられます。

ホームページの作り直しでも、要件定義の費用はかかる?

ホームページの作り直しを業者に頼む時も、要件定義にあたる作業に費用がかかるのか、という相談もよく見かけます。

呼び方は会社によって違いますが、目的や載せる内容、必要な機能を決める作業は、多くの場合に含まれています。

見積もりでは、その作業が「要件定義」「設計」「企画」など、どの名前で書かれているかを確かめてみてください。

名前が違っても、何を決めて何を渡してくれるのかが分かれば、比べられます!

よくある質問

要件定義の費用の相場はいくらですか?

公的な相場のデータは見当たらず、決まった金額はありません。関わる人数と期間で見積もられることが多く、規模や関わる部署の数、今のシステムの有無などで変わります。

要件定義の見積もりは何で比べればいいですか?

合計の金額ではなく、体制、期間、成果物の内訳と、前提条件、含まれないもので比べます。複数の会社に同じ内容のメモを渡して見積もりを取ると、比べやすくなります。

要件定義だけを別に契約することはできますか?

できる場合があります。要件定義を準委任契約、設計以降を請負契約と分けて契約する例もあります。どの形にするかは、案件や会社の方針で決めます。

要件定義の費用を抑えるにはどうすればいいですか?

目的と対象の範囲、今の業務の流れを発注側で先に書き出しておくと、聞き取りの時間を減らせます。予算が限られる時は、質を落とすより対象の範囲を絞るのがおすすめです。

要件定義を省いて、すぐに開発してもらうことはできますか?

省くと、決めきれなかったことが開発やテストの段階で見つかり、直す手間が増えがちです。小さく始めたい時も、目的と範囲だけは決めてから進めましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 要件定義の費用は、関わる人数と期間で見積もられることが多く、決まった相場の金額はない
  • 規模、部署の数、今のシステムの有無、非機能要件の厳しさなどで費用は変わる
  • 発注側が目的と範囲、今の業務の流れを先に書き出すと、費用を抑えやすい
  • 見積もりは合計ではなく、体制、期間、成果物と、前提条件、含まれないもので比べる
  • 予算が限られる時は、質を落とさず対象の範囲を絞る
要件定義ガイド

要件定義ガイド 編集部

システム開発の要件定義について、意味・進め方・要件定義書の書き方とテンプレート・必要なスキルを実務目線でまとめている情報サイトです。 公式サイト

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